「森田将棋」の名は、コンピュータ将棋の世界において特別な響きを持つ。テーブルゲームの思考ルーチン開発者、森田和郎氏の名を冠したこのシリーズは、1985年のPC-9801版「森田和郎の将棋」(エニックス)を皮切りに、様々なプラットフォームで展開されてきた。その足跡は、実に四半世紀以上に及ぶ。
シリーズ初期はエニックスから発売されていたが、ファミリーコンピュータ版「森田将棋(FC)」(1987年、セタ)は、その後の展開を大きく変える転換点となった。ファミコン初のバッテリーバックアップ機能の搭載、条件を満たすことで日本将棋連盟のアマ2級を取得できるというユニークな試み、そして強化されたAIは、多くのプレイヤーを魅了した。
スーパーファミコン時代には、さらに大胆な試みがなされた。「初段 森田将棋」(1991年、セタ)では、CPUに勝利することでアマ初段の免状が得られるという、当時としては画期的なシステムを導入。しかし、CPUの思考時間が長く、プレイヤーに時間制限を課すという、ある意味で挑戦的な難易度設定も話題を呼んだ。その後も「早指し二段 森田将棋」「早指し二段 森田将棋2」と、シリーズは進化を続け、後者では、ゲーム内の段位認定モードで優秀な成績を収めたプレイヤーを対象とした認定競技会が開催され、プロ棋士がその腕前を評価するというイベントも行われた。
NINTENDO 64版「森田将棋64」(1998年、セタ)は、ネットワーク対戦機能を搭載。専用のネットワークサービスを通じて、全国のプレイヤーと対局できるという、当時としては先進的な試みを実現した。
2000年代に入ると、プラットフォームは携帯ゲーム機やスマートフォンへと広がりを見せる。ドリームキャスト、ワンダースワン、ゲームボーイアドバンス、ニンテンドーDS、そしてiPhone/iPod touchと、時代に合わせた形で「森田将棋」は新たなファンを獲得し続けた。開発・販売元も、エニックスからセタ、悠紀エンタープライズ、ハドソン、タイトーへと移り変わったが、その名は常にコンピュータ将棋ファンに親しまれてきた。
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