コンピューター登場以前の自動チェス機械から、初期電子計算機を用いたゲーム的実験までの流れを概観する。
コンピューターゲームの歴史は、電子計算機が生まれるよりもずっと以前、自律的に動く機械というアイデアにまで遡ります。プログラムされた論理に従い、機械が思考するかのように動作する。その思想は、やがて人間と対話する電子装置へと受け継がれていきました。
電子計算機の黎明期には、その能力を実証する手段として、ゲーム的なプログラムが次々と開発されます。
これらは娯楽の提供を目的としたものではありませんでしたが、後の対話型エンターテインメントが花開くための、技術的・概念的な礎となったのです。
PDP-1上で開発された『Spacewar!』が、後のビデオゲームの基本構造をいかにして確立したかを分析する。
1962年、マサチューセッツ工科大学(MIT)にて、ビデオゲームの歴史を決定づける、まさに原点と呼ぶべき作品が誕生します。DEC社のミニコンピュータ「PDP-1」上で開発された『Spacewar!』です。このゲームは、それまでの静的なプログラムとは一線を画し、現代に至るビデオゲームの基本構造を数多く確立しました。
その革新性は、ハードウェアの性能を最大限に引き出すことで実現されました。
大学や研究機関にコピーが広まる中で、ここで確立された設計思想は、以降のあらゆるビデオゲームに受け継がれていくことになります。
『Computer Space』による初の商業化と、『PONG』の成功がアーケードビデオゲーム市場をいかに形成したかを記述する。
『Spacewar!』の熱狂は、やがて商業化への道を切り拓きます。その可能性にいち早く気づいたノーラン・ブッシュネルは、1971年に世界初の商業アーケードゲーム『Computer Space』を世に送り出しました。しかし、その複雑な操作性は大衆に受け入れられず、商業的な成功は限定的なものに終わります。
この経験から、ブッシュネルは「誰にでも直感的に理解できる単純さ」こそが市場を拓く鍵だと確信。1972年、彼が設立したアタリ社は、その思想を体現した『PONG』を発表します。卓球を極限まで単純化したこのゲームは世界的な大ヒットを記録し、コインを投入して遊ぶ「アーケードゲーム」というビジネスモデルを確立しました。こうしてビデオゲームは、新たな産業として力強い一歩を踏み出したのです。
Magnavox OdysseyからAtari 2600まで、家庭用ゲーム機市場の成立とカートリッジ交換方式がもたらした技術的革新を解説する。
アーケードが市場を席巻する一方、家庭でビデオゲームを楽しむための専用機開発も進みました。初期の製品は複数のゲームを本体に内蔵する形式でしたが、やがてハードウェアの構造に大きな転換点をもたらす、ある発明が登場します。
それが「ROMカートリッジ交換方式」でした。家庭用ゲーム機市場の成立期を象徴するハードウェアは、この技術革新を軸に展開していきます。
これにより、家庭用ゲーム機は単なる電子玩具から「多様なソフトウェアを体験するためのプラットフォーム」へと進化を遂げ、現代まで続く市場の原型を創造したのです。
CPUの搭載がゲームロジックの複雑化を可能にし、グラフィック表現やゲームメカニクスをいかに進化させたかを分析する。
1970年代中盤、マイクロプロセッサ(CPU)の登場が、ビデオゲームの設計に構造的な大変革をもたらします。それまでゲームの論理は、物理的な電子回路の組み合わせで実現されており、その複雑さには自ずと限界がありました。
しかし、Intel 8080やZilog Z80といった安価なCPUが利用可能になると、ゲームのロジックはソフトウェア、すなわちプログラムによって制御されるようになります。この変化は、それまで不可能だった複雑なゲームデザインを実現させました。例えば、思考する敵キャラクター、多彩な攻撃パターン、変化に富んだステージ構成などです。ゲームをより戦略的で多層的な体験へと進化させる、強固な基盤がここに整いました。
1978年の『スペースインベーダー』の大ヒットが社会現象となり、ビデオゲームを巨大なエンターテインメント産業へと押し上げた過程を記述する。
1978年、CPUの能力を最大限に活用し、ビデオゲームを単なる娯楽から巨大な産業へと一気に押し上げた、画期的なタイトルが誕生します。タイトーが発表した『スペースインベーダー』です。計算され尽くしたゲーム性と、敵が減るにつれて速度を増す独特の緊張感がプレイヤーを虜にし、日本中を巻き込む社会現象となりました。
「インベーダーハウス」が乱立し、100円硬貨が市場から消えるほどの熱狂を生み出した本作は、ゲーム文化にも大きな影響を与えます。他者と得点を競う「ハイスコア」の概念を一般化させ、ゲームに持続的な競争性をもたらしたのです。この世界的な成功は、ビデオゲームが持つ巨大な市場価値を証明し、後のゲーム史を牽引する、巨大な原動力となったのでした。
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