『夏色小町 【一日千夏】』は、携帯電話の電波さえ届かない山間の静かな村を舞台に、部活動に打ち込む少年少女たちの瑞々しい青春を描いた恋愛アドベンチャーゲーム。2003年09月25日にプリンセスソフトからPlayStation 2で発売されました。本作はPCゲームブランドPurple softwareのデビュー作『夏色小町』のコンシューマー移植版です。水泳部の部長でありながら記録の伸び悩みに焦る主人公・中田友也と、弓道で全国大会連覇を成し遂げた幼馴染・有賀美琴。疎遠になっていた二人が、夏休みを前にした選手宣誓式をきっかけに再び距離を縮め、止まっていた時間が動き出すひと夏の物語が描かれています。

プレイヤーは主人公の視点を通じて、一学期の終わりから夏休みにかけての日々を過ごします。マップ画面から移動先を選択してヒロインたちと交流を深めるオーソドックスなシステムを採用しており、複雑なパラメータ管理に追われることなく、純粋に物語への没入感を楽しめる構成です。弓道場に響く弦音や、プールに輝く日差し、そして夕暮れの神社の静寂といった田舎特有の情景描写が丁寧に積み重ねられており、都会の喧騒とは無縁の場所で、幼馴染や義妹、クラスメートたちと育む穏やかで切ない関係性を追体験していきます。

特筆すべきは、月杜尋氏と悠樹真琴氏が手掛ける透明感あふれるキャラクタービジュアルと、作品全体を包み込むノスタルジックな空気感です。サブタイトルの「一日千夏」は、「一日千秋」という言葉になぞらえ、愛しい人を待つ時間の長さと、夏の一日一日が持つ密度の濃さを象徴しています。ヒロイン・美琴の凛とした袴姿や、夏祭りでの浴衣姿など、日本の夏ならではの風情が視覚的にも美しく表現されており、誰もが心の奥に持っている「理想の夏休み」の記憶を呼び覚ますような、清涼感のある純愛ストーリーとして完成されています。

原作を手掛けたPurple softwareは、美麗なビジュアルと純愛路線で人気を博したブランドです。本作はその記念すべき第一作目であり、後の作品に通じる「清廉さ」の原点が見て取れます。日本の田舎を舞台にした青春群像劇や、ひと夏の不思議な体験に惹かれた方は、映画『サマーウォーズ』や『時をかける少女』などを鑑賞することで、本作が描こうとした日本の原風景と少年少女の成長物語の魅力をより深く味わうことができるでしょう。

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