『水月 弐 〜Portable〜』は、水守町に伝わる哀切な伝承と新たな血の宿命を情緒的に綴る和風伝奇アドベンチャー。2012年5月24日にPIACCIからPlayStation Portableで発売され、先行して登場したPlayStation 3版をベースに、ヒロインの追加やシナリオの改稿を施したコンシューマー版の決定版として登場しました。
物語は、緑豊かな水守町に住む弓道部員の少年・守矢が、山奥の湖で水浴びをする二人の少女を目撃したことから動き出します。その日のうちに守矢の自宅へと現れた少女たちは、日向と小宵という姉妹であり、父親の紹介で同居生活を送ることになります。穏やかな日常の裏側で、町に古くから伝わる土着信仰や民俗学的な謎、そして主人公たちを縛り付ける数奇な運命が徐々にその全貌を現していきます。
システムは、選択肢によって物語が分岐する正統派のアドベンチャー形式を採用しています。PSP版の大きな魅力は、PS3版では攻略不可能だった主人公の妹・和(なごみ)がヒロインへと昇格し、完全新規ルートが追加されている点です。さらに、主要ヒロインの一人である咲姫のエンディングも増設されるなど、移植にあたって既存シナリオにも大幅な加筆と修正が行われ、物語の深みと完結性がさらに向上しました。
演出面では、PSPの高精細な液晶に最適化されたイベントCGが多数追加されており、視覚的な没入感を高めています。主人公を除くフルボイス仕様により、声優陣による迫真の演技が、伝奇もの特有の緊迫感や切なさをより一層際立たせます。BGMは、霜月はるか氏が歌う主題歌「通りゃんせ」をはじめ、作品の情緒的な雰囲気を象徴する高品質な楽曲が揃っており、プレイヤーを幻想的な世界観へと深く誘います。
前作『水月』から世界観の系譜を受け継ぎつつも、キャラクターや舞台を一新しているため、本作からでも独立した物語として十分に楽しめます。民俗学をベースにした深遠な設定と、個々のキャラクターが抱える葛藤、そして衝撃的な真実に迫るシナリオ構成は健在です。和風伝奇ならではの物哀しさと、運命に抗おうとする人々の意志が描かれた、高いドラマ性を誇る一作です。
『水月 弐 〜Portable〜』は、2002年に発売され和風伝奇ブームの火付け役となったPCゲーム『水月』の正統な続編として制作されました。前作の持つ幻想的かつ重厚な空気感を継承しつつ、新たな世代のキャラクターたちが織りなす宿命の物語が、現代の視点から再構築されています。













コメントを追加