『絶対迷宮グリム 〜七つの鍵と楽園の乙女〜』は、迷い込んだ童話の世界で自分自身の幸せと世界の真実を求めて旅するおとぎ話アドベンチャー。2010年4月28日に花梨エンターテイメントからPlayStation Portableで発売され、グリム兄弟や赤ずきんといった馴染み深い童話の登場人物たちが織りなす幻想的かつ毒のある物語が、多くのプレイヤーを魅了しました。

物語の舞台は、深い森に囲まれた平穏な村「ハルツ」。主人公の少女・ヘンリエッタは、ある日突然、村の住人たちが消えてしまう異変に遭遇します。彼女は、村を訪れていた放浪の兄弟「ヤーコプ」と「ヴィルヘルム」のグリム兄弟と共に、消えた人々を救うため、そして自分の中に眠る「七つの鍵」の謎を解き明かすために、不思議なおとぎ話の世界へと足を踏み入れます。

本作の最大の特徴は、誰もが知るグリム童話を独自の解釈で再構築したダークで艶やかな世界観です。赤ずきんやシンデレラ、白雪姫といったキャラクターたちが、一癖も二癖もある魅力的な男性キャラクターとして登場します。物語が進むにつれて、美しく残酷なおとぎ話の裏側にある「本当の真実」が明かされていく構成は、耽美な作風を得意とする花梨エンターテイメントならではの真骨頂と言えます。

システム面では、選択肢によって物語が分岐する伝統的なアドベンチャー形式を採用。各キャラクターのルートでは、童話のモチーフを活かした甘く切ない恋愛模様と共に、主人公が過酷な運命に立ち向かう成長劇が描かれます。2011年7月21日には、新キャラクターの追加やエンディング後のエピソードを大幅に増量した『ディレクターズカット』版も発売され、シリーズの完結性をさらに高めました。

ビジュアル面では、キリ(Kiri)氏が手掛ける繊細なキャラクターデザインと、作品の雰囲気を象徴する幻想的な音楽が、メルヘンと狂気が交錯する世界を鮮やかに彩ります。フルボイス仕様(主人公を除く)により、豪華声優陣による情感豊かな演技が、おとぎ話の登場人物たちの葛藤や愛情を臨場感たっぷりに再現しています。夢と現実が交差する迷宮の果てで、ヘンリエッタが手にする「最高のハッピーエンド」とは何かを問いかける一作です。

『絶対迷宮グリム 〜七つの鍵と楽園の乙女〜』は、19世紀ドイツの言語学者であるグリム兄弟が編纂した『子どもと家庭の童話集』を原典としています。作中にはグリム童話のみならず、アンデルセン童話やペロー童話のエッセンスも散りばめられており、文学的な背景をベースにしたファンタジー作品として構築されています。

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