『クランク&ラチェット マル秘ミッション☆イグニッション!』は、2008年にPlayStation Portable向けに発売されたアクションゲームであり、シリーズ初のクランク単独主役作品として位置づけられています。開発はHigh Impact Gamesが担当し、従来の探索型アクションに加えて、スパイ映画風の潜入・変装・謎解き要素を導入した構成が特徴です。2009年にはPlayStation 2版が北米限定で発売され、2024年にはPS4/PS5向けにクラシックスカタログとして再発行されました。

物語は、銀河最大の宝石「無限の瞳」の盗難事件にラチェットが巻き込まれ、容疑者として逮捕されるところから始まります。クランクは「マル秘エージェント」としてラチェットの無実を証明するため、銀河を股にかけた潜入捜査を開始します。変装による敵の欺き、赤外線センサーの回避、マフィアの尾行、ダンスパーティへの潜入など、スパイ映画の定番演出が多数盛り込まれたステージ構成が展開されます。

ゲームシステムは、クランク専用の「マル秘ガラメカ」を駆使して進行する構造で、敵の背後からの必殺技「マル秘アクション」や、変装アイテム「ホロモノクル」による潜入が可能です。また、ラチェットによるバトルアリーナ攻略、ガジェボットによる仕掛け解除、クォークによる特殊任務など、複数のプレイキャラクターによるステージ分岐が導入されています。武器の強化、スキルポイントの収集、チタニウムボルトの探索など、シリーズ恒例のやり込み要素も健在です。

演出面では、クランクの潜入任務を軸にしたスパイ映画的な構成が強調されており、変装中の無防備状態や、敵に見破られるリスクなど、緊張感のあるプレイ体験が提供されます。一方で、変装アイテムの性能が高すぎることや、潜入よりも正面突破の方が効率的な場面が多いなど、ゲームバランスに課題があると指摘されています。全体としては、シリーズの新機軸を模索した番外編としての位置づけであり、クランクのキャラクター性を掘り下げる構成が施された作品です。