『フィッシュアイズポータブル』は、2006年9月28日にマーベラスエンターテイメントよりPlayStation Portable向けに発売された釣りシミュレーションゲームであり、淡水魚釣りをテーマにした『フィッシュアイズ』シリーズの携帯機向けタイトルである。開発はシリーズを通じて自然描写と魚の挙動に定評のあるチームが担当し、癒し系釣りゲームとしての側面と、リアルな釣り体験の再現を両立させた構成となっている。

本作の最大の特徴は、湖・川・渓谷といった複数のフィールドにおける時間・天候・季節の変化がリアルタイムで反映される自然描写にあり、川のせせらぎや虫の鳴き声、雨音などの環境音とともに、プレイヤーは静かな釣りのひとときを体験することができる。登場する魚は全22種類で、イワナ、ヤマメ、ニジマス、ブラックバス、アユなど、日本の淡水域に生息する魚種が中心となっており、それぞれに生息地や釣れる時間帯、好む餌が設定されている。

釣り具の選択は、ロッド、リール、ライン、ルアー、餌など約150種類以上のタックルから構成されており、釣り場や魚種に応じて適切な組み合わせを選ぶ必要がある。釣り方もルアー、フライ、餌釣りの3系統が用意されており、プレイヤーの戦略と知識が釣果に直結する設計となっている。魚の挙動は水中での動きや反応がリアルに再現されており、ヒットからファイト、ランディングまでの一連の流れに緊張感と達成感が伴う。

演出面では、PSPの性能を活かした水面の反射や魚影の描写、釣り上げた瞬間のカメラ演出などが実装されており、携帯機ながらも高い没入感を実現している。一方で、前作『フィッシュアイズ3』とステージ構成や魚種がほぼ同一であること、ストーリー性が希薄であること、対戦機能の必要性に疑問があるといった指摘もあり、シリーズファンからは“癒し系釣り体験”としての評価と、“新規性の乏しさ”への批判が混在する結果となった。

なお、2007年には廉価版『フィッシュアイズポータブル Best Collection』も発売されており、現在ではプレミア価格で取引されることもある。シリーズとしては、後にWii版『Fish Eyes Wii』や3DS版『フィッシュアイズ3D』へと展開されており、淡水釣りゲームの定番ブランドとして一定の地位を築いている。