『トップギア・ラリーSP』は、携帯ゲーム機の限界を遥かに超えた3Dグラフィックで、泥と埃にまみれた過酷なラリー競技を描き切った奇跡の本格レーシングゲーム。2003年7月25日にケムコからゲームボーイアドバンスで発売され、オーストラリアの開発会社Tantalus Interactiveが誇る驚異的な技術力によって「GBAで最も美しいレースゲーム」の一つとして称賛された作品です。
本作の最大の特徴は、GBAというハードウェアの制約を感じさせない、滑らかで立体的な映像表現にあります。ポリゴンで描かれた車体はサスペンションの動きに合わせてリアルに挙動し、コース上の木々や起伏、巻き上がる砂煙までもが緻密に描写されています。挙動面でもラリー特有の「滑らせて曲がる」感覚が見事に再現されており、コーナーへの進入角度とアクセルワーク、そしてカウンターステアを駆使して車体を制御する緊張感は、据え置き機のシミュレーターにも劣らない手応えを持っています。
ゲームモードは、世界各地のコースを転戦する「チャンピオンシップ」を中心に、タイムアタックやクイックレースなどが用意されています。登場する車種は「ランサーエボリューション」や「インプレッサ」などを彷彿とさせる架空のマシンたちですが、それぞれに駆動方式やハンドリング特性が異なり、セッティングによる微調整も可能です。また、本作にはレース中のBGMが存在しません。聞こえてくるのは荒々しいエンジン音と、タイヤが砂利を噛む音、そしてコ・ドライバー(ナビゲーター)の指示のみ。このストイックな演出が、孤独なタイムアタックの臨場感を極限まで高めています。
難易度は高めに設定されていますが、操作に慣れ、車を意のままに操れるようになった時の快感は格別です。携帯機でここまで本格的なドライブフィールを実現した本作は、レースゲームファンにとって、まさにポケットの中の至宝といえる存在です。
『トップギア・ラリー』シリーズは、1992年にスーパーファミコンで発売された『トップレーサー(海外名:Top Gear)』を源流とするレースゲームの系譜です。特にN64版の『トップギア・ラリー』は、そのリアルな挙動で人気を博しました。本作は海外スタジオが開発を手掛け、欧米のラリーゲームの文法を携帯機に落とし込んだ意欲作です。













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