『ふしぎの国のアンジェリーク』GBA版は、2002年に発売された「アンジェリーク」シリーズの番外編作品であり、従来の育成型恋愛シミュレーションとは異なる構造を採用しています。本作では「不思議の国のアリス」をモチーフにした幻想的な世界観が展開され、プレイヤーは主人公アンジェリークとして、午後4時までに守護聖のお茶会に参加することを目的とした旅を進める形式となっています。

ゲームシステムはすごろく型のボードゲーム形式を採用しており、マス目を進むことでイベントやミニゲームが発生する構造です。これにより、従来のシリーズ作品とは異なるテンポとプレイ感が生まれており、ライトな遊び方とシリーズファン向けの要素が融合した設計となっています。特に、守護聖との交流やエンディング分岐に関しては、シリーズの世界観を踏襲しつつも独自の演出が施されています。

GBA版では、携帯機向けに最適化されたインターフェースと操作性が導入されており、移動やイベント選択が簡略化されています。ただし、PS版と比較すると音声演出や一部のエンディング演出が省略されており、体験内容に差異が存在します。これにより、GBA版は携帯性を重視した設計である一方、演出面では簡略化された構成となっています。

また、本作は前緑の守護聖「カティス」が登場する唯一の作品であり、彼とのエピソードはシリーズ内でも特異な位置づけを持ちます。この点は、シリーズの時系列や設定理解において重要な要素となっており、他作品との連続性を意識した設計が見受けられます。結果として、本作はシリーズファンに向けた補完的な意味合いを持つタイトルとして機能しています。