『My Merry May』は、ヒト型人工生命体「レプリス」の少女との奇妙な同居生活を描く恋愛アドベンチャーゲーム。2002年04月25日にKIDからDCで発売されました。その後、PS2への移植を経て、2005年06月30年には続編『My Merry Maybe』とセットになり追加シナリオを収録した完全版『My Merry May with be』がPS2で、2010年03月25年にはPSPで発売されています。物語の主人公は、全寮制の高校に通う平凡な学生・渡良瀬恭介。ある日、海外に住む家族から送られてきた巨大な荷物の中には、人間の少女と見紛うほど精巧な人工生命体「レプリス」が入っていました。「レゥ」と名付けられた彼女は、見た目は同世代の美少女ですが、中身は生まれたばかりの赤ん坊同然。プレイヤーは彼女の保護者となり、言葉や常識を教えながら、種族を超えた絆を育んでいきます。

ゲームプレイは、テキストを読み進めながら選択肢を選んでいくオーソドックスなアドベンチャー形式ですが、ヒロインであるレゥの「成長」が物語の鍵を握ります。当初は片言しか話せず、無垢ゆえにトラブルを引き起こす彼女ですが、主人公との触れ合いを通じて急速に学習し、感情豊かに変化していきます。シナリオにはKID作品特有の「サイトビュー(視点変更)」のような複雑なシステムはありませんが、主人公の選択がレゥの人格形成や周囲の人間関係に影響を与え、物語は心温まるハッピーエンドから、人工生命体の宿命に翻弄される切ない結末まで多岐に分岐します。

本作の特徴は、輿水隆之氏による柔らかく透明感のあるキャラクターデザインと、そのビジュアルからは想像できないほど重厚でシリアスなテーマ性です。「つくられた命」に魂は宿るのか、プログラムされた感情は愛と呼べるのかといった、SF的な命題が日常描写の中に静かに織り込まれています。単なる萌え要素の消費に留まらず、家族愛や生命倫理といった深い問いかけを含んだシナリオは「泣きゲー」としても高く評価されており、続編と合わせて一つの壮大なサーガを形成しています。

本作のシナリオを手掛けたQ’tronは、科学的な設定と情緒的な物語の融合に定評があります。人工生命体(アンドロイド)と人間の心の交流というテーマは、カズオ・イシグロの小説『クララとお日さま』などにも通じる普遍的なものです。ゲームで描かれた「作られた存在」の純粋さに心を打たれた方は、こちらの小説も併せて読むことで、その切なさと愛おしさをより深く味わうことができます。

クララとお日さま (ハヤカワ文庫)

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