『将棋最強』シリーズは、プロ棋士の思考アルゴリズムを徹底的に研究し、家庭用ゲーム機で手軽に高レベルな対局を楽しめる将棋ソフトです。1994年12月23日に魔法からゲームボーイで発売され、その後スーパーファミコンやPlayStationといった主要ハードで展開されました。

本作の最大の特徴は、当時の家庭用将棋ソフトの中でも屈指の棋力を誇る思考エンジンの搭載にあります。特にスーパーファミコンで発売されたシリーズ作品(『I』および『II』)では、処理能力を高めるための高性能チップ「SA1」をカセット内に搭載していました。これにより、ハードの制約を超えた高度な長考と精密な一手を両立させ、有段者でも手応えを感じられる本格的な対局環境を実現しています。

モード構成においては、通常の平手対局だけでなく「将棋最強モード」が大きな柱となっています。これは中盤の緊迫した局面や、詰むか詰まれるかの大接戦といった「指定局面」から対局を開始し、そこから勝利を目指すという実戦形式のトレーニングモードです。100種類以上のシチュエーションが用意されており、逆転の妙味や終盤の勝ち筋を鍛えるためのストイックな設計が当時の将棋ファンから高く評価されました。

PlayStationで展開されたシリーズでは、ナンバリングタイトルである『2』に加え、プロ棋士の監修を受けた『プロに学ぶ』といった派生作品も登場しました。内藤國雄九段や南芳一九段といった実在のプロ棋士が手がけた問題を収録し、プロの思考プロセスを直接体験できる学習ツールとしての側面が強化されています。さらに、棋譜の保存機能や詳細な対局分析機能もブラッシュアップされ、自身の打ち筋を客観的に見直すことが可能です。

携帯機向けでは、1994年のゲームボーイ版から1999年のゲームボーイカラー版『GB』へと進化を続けました。ハードの性能を最大限に引き出した高速な思考ルーチンはそのままに、場所を選ばず詰将棋や段位認定試験に挑戦できる手軽さを提供しています。初心者から上級者まで、実戦を通じて棋力を向上させるための機能を一貫して追求し続けたシリーズといえます。

『将棋最強』シリーズは、魔法(当時のマジカルカンパニー)が展開した本格派将棋ゲームであり、デジタルならではの強力なAIと豊富なトレーニングメニューを通じて、家庭で手軽に上達と対局を楽しめることを目的とした作品です。

将棋最強