『アーシャのアトリエ 〜黄昏の大地の錬金術士〜 DX』は、2019年12月25日にコーエーテクモゲームスよりPlayStation 4/Nintendo Switch/Steam向けに発売されたリマスター作品であり、2012年にPlayStation 3向けに発売された原作『アーシャのアトリエ』のHD化・DLC完全収録版にあたる。黄昏シリーズ三部作の第1作目に位置づけられ、錬金術文明の衰退と再興を描く“黄昏世界”の導入編として制作された。

物語は、錬金術が忘れ去られた時代に、薬師として暮らす少女アーシャ・アルトゥールが、3年前に行方不明となった妹ニオの幻影を目撃したことをきっかけに、錬金術を学びながら妹の行方を追う旅に出るという構成である。旅の中でアーシャは、錬金術の痕跡が残る遺跡や光る花の謎を解き明かし、古代文明の遺産と向き合っていく。物語は3年間の制限時間内に進行し、プレイヤーの行動によって複数のエンディングに分岐するマルチエンディング形式が採用されている。

ゲームシステムは、調合・探索・戦闘・依頼・日記記録といったアトリエシリーズの基本要素に加え、「想い出ポイント」や「潜在能力」「調合スキル」などの独自要素が導入されている。調合では、素材の投入順や特性・属性値・潜在能力の組み合わせによってアイテムの性能が大きく変化し、戦闘や依頼達成に直結する。戦闘はターン制で、位置取りやアクティブコマンド、必殺技ゲージなどを活用した戦術的な構成となっており、アーシャはスキルを持たず、アイテム使用に特化した支援型キャラクターとして設計されている。

DX版では、フィールド移動に「走る」機能、戦闘に「早送り」機能が追加され、テンポの改善が図られている。また、PS Vita版『Plus』での追加要素(マリオン・オディーリアの参戦、衣装41種、採取地「うしの楽園」など)と、過去配信されたDLCがすべて収録されており、最初から全要素を楽しむことができる。グラフィックは高解像度化され、UIや操作性も現行機向けに最適化されている。

演出面では、キャラクターデザインを左(ひだり)が担当し、阿知波大輔・柳川和樹らによるBGM、霜月はるかによる主題歌「花標」が作品世界を彩っている。イベントは3Dモデルによる演技とフルボイスで展開され、日記記録による強化ボーナスやスチル演出なども実装されている。アーシャの成長と妹への想い、そして黄昏世界の謎に迫る旅路は、シリーズの新たな幕開けとして高く評価された。