『メダル・オブ・オナー』は、2010年10月21日にエレクトロニック・アーツから発売されたPlayStation 3、Xbox 360、PC対応のファーストパーソン・シューティングゲーム。第二次世界大戦を舞台としてきたシリーズの伝統を刷新し、現代のアフガニスタン紛争を題材に、最高峰の特殊部隊「Tier 1(ティアワン)オペレーター」の知られざる戦いをリアルに描いたリブート作品となっています。

物語は、2001年のアフガニスタン侵攻初期をベースに展開されます。プレイヤーは、アメリカ軍の中でも数少ない最精鋭「Tier 1」に所属する隊員や、大規模な戦力を担う「レンジャー部隊」の兵士となり、テロリスト掃討作戦に従事します。ステルス行動で敵陣深くに潜入する静かなる任務から、圧倒的な火力で押し寄せる敵を迎撃する激しい防衛戦まで、立場の異なる複数の兵士の視点を通じて、現代戦の苛烈さと任務遂行のプロセスが克明に描写されます。

本作の特筆すべき点は、シングルプレイとマルチプレイで異なる開発スタジオとゲームエンジンを採用していることです。ドラマチックなキャンペーンモードはEA Los Angeles(後のDanger Close)がUnreal Engine 3を用いて開発し、最大24人での対戦が可能なマルチプレイモードは『バトルフィールド』シリーズのDICEがFrostbiteエンジンを用いて制作しました。これにより、物語への没入感と、戦場での破壊表現やサウンドの迫力という、両スタジオの強みが最大限に活かされています。

実在する隊員の監修による徹底したリアリティの追求と、髭を蓄えた兵士たちの泥臭いビジュアル。華々しい英雄譚ではなく、任務に生きるプロフェッショナルたちの「仕事」としての戦争を描き出した、硬派で重厚なFPSです。

本作は、1999年にPlayStationで第1作が発売された『メダル・オブ・オナー』シリーズのリブート(新生)タイトルです。スティーヴン・スピルバーグ監督が監修した初代作以来、長らく第二次世界大戦FPSの代名詞として君臨してきましたが、本作で初めて現代戦へとシフトしました。この路線変更は、当時の競合タイトルである『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア』などの影響を受けつつも、より現実に即した「兵士の視点」を重視した独自のスタイルを確立しました。

原作:メダル・オブ・オナー