『あかね色に染まる坂』は、親同士が決めた許嫁の少女との出会いをきっかけに、個性豊かなヒロインたちと騒がしくも温かい日常を過ごす学園恋愛アドベンチャー。2007年7月27日にfengからPC版が発売され、2008年8月14日にGNソフトウェアからPlayStation 2版『あかね色に染まる坂 ぱられる』が、2009年12月17日にはPlayStation Portable版『あかね色に染まる坂 ぽーたぶる』がそれぞれ発売されました。

物語は、かつて「ジェノバ」という異名で恐れられていた少年・長瀬準一の前に、不遜ながらも気品漂う美少女・片桐優姫が現れるところから動き出します。二人は最悪の出会いを果たしますが、実は親同士が勝手に決めた許嫁であることが判明。準一の家で共に暮らすことになった優姫、そして兄を深く慕う実の妹・長瀬湊を中心に、周囲の友人たちを巻き込んだ波乱の学園生活が描かれます。

ゲームシステムは、テキストを読み進めながら選択肢によってヒロインとの好感度を変化させるオーソドックスなアドベンチャー形式です。家庭用移植版である『ぱられる』および『ぽーたぶる』では、原作PC版には存在しなかった新ヒロイン「彩城天音」が追加されました。これにより、既存のルートに加えて新たなシナリオやイベントCGが大幅に拡充されており、既に原作をプレイしたユーザーにとっても新鮮な体験を提供する構成となっています。

魅力の核心は、ヒロインたちの細やかな心情描写と、テンポの良いコメディ要素の融合にあります。優等生ながら武術の達人である湊や、準一をライバル視するツンデレ気質の優姫など、属性豊かなキャラクターたちが織りなす掛け合いが物語を彩ります。夕暮れ時のグラフィック演出や情緒的なBGMも、タイトルの通り「あかね色」に象徴される物語の雰囲気を作り上げています。

メディアミックス展開も盛んに行われ、テレビアニメ化やコミカライズによってさらに知名度を上げました。家庭用版ではアニメ版と同じ豪華声優陣によるフルボイスが収録されており、より没入感の高いプレイが可能です。PSP版ではメモリースティックへのデータインストール機能や、どこでもプレイできる手軽さが加わり、長年にわたって愛される恋愛アドベンチャーとしての地位を確立しました。

『あかね色に染まる坂』は、美少女ゲームブランド「feng」が制作したPC用アドベンチャーゲームを原作としています。本作のヒットにより、同社の『星空へ架かる橋』などと共に「空シリーズ」三部作の一角としてファンに親しまれることとなりました。

あかね色に染まる坂