『TOCAレースドライバー3』は、ツーリングカーからフォーミュラ、オフロードまで多種多様なモータースポーツを網羅したリアル志向のレーシングシミュレータ。2008年1月24日にインターチャネル・ホロンからPlayStation 2で発売され、欧米で高い評価を得た英国コードマスターズ社の看板タイトルの日本語ローカライズ版として登場しました。

本作の最大の特徴は、一本のソフトでありながら35種類以上もの異なるレースカテゴリーを体験できる圧倒的なボリュームにあります。ウィリアムズのF1マシンからDTM(ドイツツーリングカー選手権)、V8スーパーカー、さらにはラリーやバギー、果ては芝刈り機まで、およそ考えられるあらゆるジャンルのマシンが実名・実車で収録されています。収録コースも実在のサーキットを含め80種類を超え、世界各地の多様な路面状況で腕を競うことができます。

シミュレーターとしての質を支えるのは、当時の水準で極めて高度に練り込まれた物理演算エンジンです。マシンの挙動は非常にシビアに再現されており、単にスピードを出すだけでなく、荷重移動やタイヤのグリップ限界を見極める繊細なドライビングが求められます。特にダメージ表現は本作の白眉であり、クラッシュによる外装の破損はもちろん、過度な負荷によるエンジンブローやタイヤのバーストといったメカニカルトラブルまでがリアルタイムで発生します。

メインモードの一つ「ワールドツアー」では、専属のメカニックであるリック・アーヴィングの指導を受けながら、一人のプロドライバーとして様々な選手権に挑戦するストーリー仕立てのキャリアを体験できます。対する「プロキャリア」モードでは、特定のカテゴリーに特化してアマチュアから頂点を目指すサクセスストーリーが展開され、プレイヤーの好みに合わせた遊び方が可能です。

AIの質も非常に高く、敵車がプレイヤーを意識してラインをブロックしたり、時には自らミスをしてコースオフしたりといった人間味のある挙動を見せます。グラフィック面ではPlayStation 2の性能を限界まで引き出し、車体の映り込みや天候の変化を鮮明に描写。単なるスピード競争に留まらず、レースという「競技」そのものの厳しさと高揚感を追求した、まさにアルティメット(究極)の名に相応しい一作です。

『TOCAレースドライバー3』は、英国コードマスターズが1997年から展開してきた『TOCA Touring Car Championship』シリーズの流れを汲むタイトルです。本作は「TOCA」の名を冠したシリーズ最後の作品となり、後に世界的ヒットを記録する『GRID』シリーズへとその魂が受け継がれることとなりました。

TOCA Race Driver