『BLACK』、2006年4月6日にエレクトロニック・アーツから発売されたPlayStation 2対応のファーストパーソン・シューティングゲーム。レースゲーム『バーンアウト』シリーズで知られるCriterion Gamesが開発を手掛け、「銃を撃つこと」そのものの衝動と、戦場における破壊の美学を極限まで追求したアクションシューティング作品となっています。

物語は、CIAの秘密工作員ジャック・ケラー曹長が、尋問官に対して過去の過酷な任務を回想するという映画的な手法で進行します。しかし、本作の本質は複雑なシナリオや謎解きにはありません。プレイヤーは東欧のテロリスト鎮圧という名目のもと、圧倒的な火力を誇る銃火器を手に、眼前に立ちはだかる敵を正面からねじ伏せていくことになります。隠密行動や戦略的な駆け引きよりも、トリガーを引き続けることによる制圧力が何よりも重視されています。

特筆すべきは、当時のハードウェアの限界に挑んだグラフィック描画と、徹底的な「破壊」の演出です。銃弾が柱を削り、看板を穴だらけにし、ガラスを粉砕する様子が、立ち込める硝煙や飛び散る薬莢と共に緻密に描かれています。戦場のあらゆるオブジェクトが破壊の対象となり、激しい銃撃戦の果てに廃墟と化していくステージの様相は、まさに「ガン・ポルノ」と称されるほどのフェティシズムを感じさせます。

硝煙の匂いと爆音が支配する戦場で、ひたすらに敵を撃ち倒す高揚感。無骨で重厚なFPSとして、純粋な破壊の連鎖を楽しむことができる一作です。

本作は、イギリスの開発スタジオCriterion Gamesが制作した完全オリジナル作品です。同スタジオはそれまでレースゲームを主力としていましたが、本作で初めてFPSジャンルに参入しました。ハリウッドのアクション映画のような体験を目指して作られ、その技術力と破壊表現の高さは、後のFPSタイトルにも影響を与えたと言われています。
BLACK