『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て! 完全版』は、2005年にプレイステーション2向けに発売されたロールプレイドラマ形式のアドベンチャーゲームです。本作は、チュンソフトが提唱する新ジャンル「RPD(ロールプレイドラマ)」の代表作として位置付けられており、従来のサウンドノベル形式を発展させた構造が採用されています。プレイヤーは、名物教師・坂本金八の代理として3年B組の担任となり、1年間にわたって生徒たちの問題を解決しながら卒業式を迎えるまでの物語を体験する設計です。

ゲームは全10話構成で、各話には「次回予告」や「イベントカード」など、テレビドラマ的な演出が導入されています。イベントカードは、従来の選択肢やフラグ管理を統合したシステムであり、登場人物との対話や行動選択に使用されます。さらに、複数のシナリオが同時進行する「ザッピング」機能が搭載されており、プレイヤーの行動によって物語の展開が分岐する構造が採用されています。これにより、周回プレイによる新たな発見や演出の変化が可能となっています。

完全版では、通常版に未収録だった2本の追加シナリオ「人にやさしく」「社会科教師の異常な愛情」が収録されており、CEROレーティングの変更に伴い、より踏み込んだテーマが扱われています。これらのシナリオは、いじめやストーカー行為など、教育現場における深刻な問題を描いており、従来の学園ドラマとは異なるサイコサスペンス的な展開が特徴です。特に、最終話では謎の美術教師「桐谷」を中心とした重厚な物語が展開され、プレイヤーの選択によって結末が大きく変化する構成となっています。

演出面では、スタジオジブリ出身の森川聡子によるキャラクターデザインが採用されており、リアル寄りのアニメ絵によってドラマ的な雰囲気が強調されています。全編フルボイスで進行し、字幕表示を排除することで、視覚と聴覚による没入感を高める設計です。また、才能開花システムによって、生徒の将来の職業を開花させるやり込み要素が導入されており、卒業式での合唱演出など、感情的な達成感を演出する仕掛けも施されています。