『ティアリングサーガシリーズ ベルウィックサーガ』は、広大な大陸を舞台に騎士団の指揮官として過酷な戦乱を生き抜くシミュレーションRPG。2005年5月26日にエンターブレインからPlayStation 2で発売され、前作『ユトナ英雄戦記』からゲームシステムを大胆に刷新した意欲作として登場しました。

物語は、ベルウィック同盟とラズ帝国という二大勢力の対立を軸に展開します。主人公であるシノン公国の公子リースは、同盟軍の一翼を担う「シノン騎士団」の隊長として、帝国の侵攻に晒される辺境の都市へと派遣されます。一国の王子でありながら小規模な部隊を率いるリースの視点を通じ、政治的な陰謀や個々の騎士たちの忠誠、そして戦火に巻き込まれる民衆の苦悩が重厚なドラマとして綴られます。

戦闘システムにおける最大の特徴は、伝統的な四角形のマス目から変更された「ヘックス(六角形)マップ」の採用です。これにより、周囲6方向からの包囲や回り込みといった戦術的な位置取りが重要視され、地形の有利不利が戦況に与える影響が格段に増大しました。さらに、味方と敵が交互にユニットを動かす「同時ターン制」に近い行動順システムが導入され、部隊数に応じた柔軟な采配が勝利の鍵を握ります。

拠点となる「シノン騎士団事務所」でのマネジメント要素も極めて緻密です。プレイヤーは限られた資金をやり繰りし、正規兵以外の強力な助っ人として「傭兵」を雇用したり、武具を修理・調達したりする必要があります。食事によって一時的にステータスを向上させる「食事」システムや、家具を購入して拠点を整える要素など、戦場以外の生活感を感じさせる細かな仕様が、過酷な軍旅に独特の奥行きを与えています。

本作は、徹底してシビアな難易度が貫かれていることでも知られています。武器の耐久度や命中率の計算、ユニットの死亡が恒久的な離脱に繋がる仕様など、一手一手の重みが極めて大きく設定されています。緻密な戦略を練り、限られたリソースを使い切って難関を突破するカタルシスは、数あるシミュレーションRPGの中でも群を抜いており、硬派な戦略ゲームファンから熱狂的な支持を受け続けています。

『ティアリングサーガシリーズ ベルウィックサーガ』は、2001年に発売された『ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記』の精神的続編にあたります。前作から設定を一新しつつ、シミュレーションRPGの原点を築いたスタッフによる「ファンタジー戦記」としての高い完成度が魅力となっています。

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