『120円の春 120Stories』は、自動販売機のジュースや電車の運賃といった「120円」という身近な金額をきっかけに、偶然出会った男女の交流を描くノベルアドベンチャー。2005年2月24日にインターチャネルからPlayStation 2で発売され、PC向けに発表された短編シリーズ4作を一本に集約した作品として登場しました。
物語は、冬・春・夏・秋の四つの季節をテーマにしたオムニバス形式で進行します。それぞれの物語に共通するのは、120円というわずかな対価が運命を動かす点です。例えば「冬」の物語では、雪の降る駅のホームで小銭が足りずジュースが買えない少女と、彼女に手を貸した主人公との一時の交流が描かれます。日常の何気ない風景の中に潜む、切なくも温かい心の機微を丁寧に掬い上げています。
「春」では電車での出会い、「夏」では120円の切符を持って海を目指す旅、「秋」ではコインロッカーの鍵が結ぶ縁など、各編ごとに異なるキャラクターとシチュエーションが用意されています。PC版では一部の作品がファンディスクや雑誌の付録として発表されていましたが、本作ではそれらが系統立てて収録されたほか、PlayStation 2版独自の要素として全編に豪華声優陣によるフルボイスが追加されました。
システム面は、テキストを読み進めていくオーソドックスなノベル形式を採用しています。過度な選択肢や分岐は排除されており、プレイヤーは純粋に物語の言葉と演出に集中することができます。原作を手掛けた「ねこねこソフト」特有の、柔らかくもどこか物悲しいビジュアルスタイルと情緒豊かなBGMが、120円という制約があるからこそ際立つ、純粋な人間関係の美しさを演出します。
短いプレイ時間の中に凝縮された感動は、忙しい日常を送るプレイヤーの心に深く染み渡る内容となっています。劇的な大事件が起きるわけではなく、あくまで等身大の男女が織りなす「120円分の幸せ」をテーマにした本作は、プレイ後に優しい余韻を残す秀逸な短編集に仕上げられています。
『120円の春 120Stories』は、PCゲームブランド「ねこねこソフト」が制作した『120円の冬』を起点とする短編シリーズを原作としています。わずかな小銭がもたらす偶然の出会いを描いた本作は、その独創的なコンセプトと叙情的なシナリオで、多くのノベルゲームファンから支持を集めました。












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