『VM JAPAN』は、日本ファルコムが誇る硬派な戦術シミュレーション『ヴァンテージ・マスター』シリーズのシステムをベースに、舞台を神秘的な「和国(わこく)」へと移した和風シミュレーションRPG。コンシューマー版は2005年2月3日にアスミック・エース エンタテインメントからPlayStation 2で発売され、PC版の名作を家庭用向けにアレンジ移植したタイトルとして展開されました。

本作の最大の特徴は、運の要素を徹底的に排除した「完全情報公開型」のゲームシステムにあります。六角形のマス(ヘックス)で区切られたマップ上で、プレイヤーは「幻魔使い」となり、地・水・火・天の4属性を持つ「幻魔(精霊)」を召喚して戦います。命中率は常に100%か0%であり、ランダムな回避やクリティカルは存在しません。将棋やチェスのように、純粋な戦術眼と計算のみが勝敗を分けるストイックな作りとなっています。

舞台となる和国は、戦国時代が終わり幕府による統治が始まった架空の島国です。「星落とし」と呼ばれる儀式によって都が壊滅し、再び混沌に包まれた世界を救うため、神楽巫女、異邦人、破戒僧といった個性豊かな8人の幻魔使いたちが旅に出ます。PS2版では、豪華声優陣によるボイス演出や、オリジナルキャラクター、新シナリオが追加されており、物語への没入感が高められています。

しかし、PC版からの移植に伴い、ロード時間の長さやインターフェースのレスポンス不足といった、快適性を損なう問題点も指摘されました。それでも、高低差のある地形を利用した位置取りや、属性相性を突き詰めるパズル的な面白さは健在で、思考ゲームとしての完成度は揺るぎないものがあります。和の情緒あふれるBGMや、日本神話や妖怪をモチーフにした幻魔たちのデザインも美しく、じっくりと腰を据えて知恵比べを楽しみたいプレイヤーに向けた一作です。

『VM JAPAN』の原作は、2002年に日本ファルコムから発売された同名のPCゲームです。さらにその源流には、1997年に発売された『ヴァンテージ・マスター』があります。西洋ファンタジーの世界観だった前作から、和風ファンタジーへと大胆にイメージチェンジを図りつつ、シリーズ特有の奥深い戦略性を継承した作品です。

VM JAPAN (PS2)