『帝国千戦記』は、古代中国を彷彿とさせる架空の帝国「パオ」を舞台に、軍師として兵を率い、大陸の戦乱を駆け抜けるタクティカル・シミュレーションアドベンチャー。2004年11月25日にインターチャネルからPlayStation 2で発売され、先行してPC向けに展開されていた壮大な歴史ロマンが、全編フルボイス化などの追加要素を伴ってコンシューマー版として登場しました。

物語は、腐敗したパオ帝国の圧政に抗うべく、かつては帝国の中枢にいた主人公の陶青(トウキ)が立ち上がるところから幕を開けます。トウキは各地の有力者や武勇に優れた武将たちを仲間に加え、自らの軍勢を組織していきます。戦いの中で描かれるのは、単なる権力争いだけでなく、トウキと彼を支える男たちが結ぶ忠誠、友情、そして時にそれを超えた深い愛憎の物語です。

システム面では、内政を行って国力を高めるパートと、リアルタイムで兵を動かす戦略的な戦闘パートが交互に進行します。戦闘では、部隊の陣形や敵との相性、そして刻一刻と変化する戦況に応じた的確な指示が勝利の鍵を握ります。各武将には固有のスキルや兵科が設定されており、どの武将をどの戦局に投入するかという軍師としての采配が試される硬派なシミュレーション要素が特徴です。

アドベンチャーパートでは、仲間の武将たちとの対話を通じて信頼関係を築いていきます。特定の武将を重用し、親密度を高めることで、彼らとの特別なイベントや個別エンディングが解放される仕組みです。PlayStation 2版では、檜山修之、森川智之、鈴村健一といった豪華声優陣による演技が加わったことで、戦記物としての重厚さとキャラクター同士の繊細なやり取りがより鮮明に描き出されています。

また、本作は「千戦記」の名に相応しく、多様な勢力図と膨大なシナリオボリュームを誇ります。プレイヤーの選択一つで大陸の歴史が塗り替えられ、救えるはずの命や失われる絆が変化するマルチエンディング方式を採用。戦場での冷徹な戦略と、拠点で交わされる熱い人間ドラマの対比が、動乱の時代を生き抜く没入感を高めている一作に仕上げられています。

『帝国千戦記』は、美少女ゲームブランド「F&C」の姉妹ブランドである「朗月(ラング・ド・シャ)」が2003年に制作したPCソフトを原作としています。中華風の壮大な世界観と戦略性の高いゲームシステム、そして重厚なBL(ボーイズラブ)要素が合わさり、独自のファン層を獲得した名作です。

帝国千戦記