『True Love Story Summer Days, and yet…』は、強い日差しが照りつける夏休みを舞台に、ヒロインたちとのかけがえのない日常を過ごす恋愛シミュレーション。2003年7月24日にエンターブレインからPlayStation 2で発売され、2004年7月22日にはシステムを改良した『エビコレ版』もリリースされました。

本作は、かつてアスキーから発売された『トゥルーラブストーリー』シリーズの流れを汲むタイトルであり、同時にその精神的な最終作としての立ち位置を持っています。最大の特徴は、これまでのシリーズが「卒業」という終わりを意識していたのに対し、本作では「夏休み」という閉じられた時間の中で物語が進行する点にあります。カレンダーに縛られず、特定の条件を満たすまで同じ日付を繰り返すような「ずっと続く夏」の演出が、作品全体のノスタルジックな雰囲気を際立たせています。

プレイヤーは高校生の主人公となり、学校や駅前、海といった様々な場所へ移動し、そこで出会うヒロインたちとの会話を楽しみます。伝統的な「休み時間システム」を継承しており、限られた移動回数の中で誰と会うかを選択する戦略性が求められます。会話パートでは、相手の機嫌や話題の鮮度が重要視され、適切な言葉を選ぶことで少しずつ心の距離を縮めていくという、シリーズ独自の繊細なコミュニケーションが体験できます。

キャラクターデザインは、後に『キミキス』や『アマガミ』を手掛ける高山箕犀氏が担当しました。前作までの柔らかいタッチから、より現代的で質感のあるビジュアルへと一新され、ヒロインたちの細かな仕草や表情の変化が鮮やかに描かれます。また、主人公の実姉である「るり」をはじめ、個性的なサブキャラクターたちとの掛け合いも魅力の一つであり、賑やかで活気ある学生生活の空気が画面いっぱいに広がります。

物語は単なる夏休みの思い出作りに留まらず、ヒロインたちの過去や家族関係に踏み込むシリアスな側面も併せ持っています。夕暮れの砂浜や夜の花火大会といった情緒溢れるシチュエーションでの告白シーンは、多くのプレイヤーに瑞々しい感動を与えました。後の名作群へと受け継がれる「日常の尊さ」を丹念に描き出した、青春恋愛ゲームの架け橋ともいえる一作に仕上げられています。

『True Love Story Summer Days, and yet…』は、エンターブレイン(現KADOKAWA)が展開してきた『トゥルーラブストーリー』シリーズの系譜を受け継ぐオリジナル作品です。本作の発売後にはOVA(全3話)も制作されるなど、メディアミックスを通じて多くのファンにその瑞々しい世界観が親しまれました。

True Love Story Summer Days, and yet…