『ゴーストヴァイブレーション』は、幽霊屋敷の闇に潜む霊たちを、科学の力で「探知」し、物理的に「釣り上げる」という斬新なシステムで挑むゴーストハンティング・アクション。2002年7月4日にアイドス・インタラクティブからPlayStation 2で発売され、『ブリンクス』などで知られる開発会社アートゥーンが手掛けた、アメコミ調のビジュアルと日本的な職人芸が融合した隠れた良作です。

物語の主人公は、ゴーストハンターの青年ジョージと、その幼馴染で勝気な女性アリシア。二人は古びた洋館「クルーニー館」で発生する怪奇現象を解明するため、特製のゴースト捕獲装置を携えて乗り込みます。本作最大の特徴は、タイトルの通りコントローラーの「振動(ヴァイブレーション)」を索敵の鍵としている点です。プレイヤーはジョージを操作し、振動の強弱を頼りに見えないゴーストの位置を特定(ロックオン)します。そして、実体化させたゴーストに「スピアガン」を打ち込み、まるで魚釣り(フィッシング)のようにリールを巻き取りながら魂を吸い取って捕獲します。

キャラクターデザインには、漫画『ラッドラブ』などで知られる多田由美氏を起用。氏の描くスタイリッシュで少し退廃的なキャラクターたちが3Dモデルで再現され、全編フルボイス(英語音声+日本語字幕)で展開されるドラマは、上質な海外アニメのような雰囲気を醸し出しています。一方で、ゲーム進行は自由に歩き回れる探索型ではなく、決められたルートを前進・後退するレール移動に近いシステムを採用しており、この不自由さが恐怖感を煽ると同時に、アクションゲームとしての評価を分ける要因ともなりました。

また、本作と世界観を共有するゲームボーイアドバンス用ソフト『ゴーストトラップ』も同月に発売されており、携帯機と据え置き機で異なる角度からゴーストハンティングの世界を描くメディアミックス展開も行われました。

『ゴーストヴァイブレーション』はオリジナル作品ですが、幽霊を科学装備で捕獲するというコンセプトは、映画『ゴーストバスターズ』へのオマージュを感じさせます。また、キャラクターデザインを担当した多田由美氏は、その独特な筆致とアメリカン・ニューシネマ的な作風で熱狂的なファンを持つ漫画家・イラストレーターです。

多田由美 画集