『BASIC STUDIO パワフルゲーム工房』は、PlayStation 2上で本格的なゲーム制作を行えるプログラミングツール。2001年4月19日にアートディンクから発売されました。
本作は、単なる「設定をいじるだけの作成ツール」ではありません。その名の通り、プログラミング言語「BASIC」を家庭用ゲーム機向けに拡張した「EZ-BASIC」を搭載しており、コードを記述してプログラムを組むという、PC顔負けのクリエイティブ環境を提供しています。ユーザーは、プログラム作成ツールのほか、3Dモデリングツール「POLY-CRAFT」、2Dドット絵作成ツール「IMAGE-SKETCH」、作曲ツール「SCORE-NOTE」という計5つの本格的なアプリケーションを駆使し、ゼロからオリジナルゲームを構築できます。USBキーボードやマウスにも対応しており、当時の環境で可能な限りPCライクな操作性を実現していました。
特筆すべきは、アートディンクのファンを喜ばせる豊富な収録素材です。同社の名作『カルネージハート』のOKE(ロボット)、『ルナティックドーン』のファンタジー背景、『ぶちギレ金剛!!』の重機など、歴代タイトルの3Dモデルや画像データがライブラリとして同梱されています。これらを活用することで、絵が描けないユーザーでも市販ゲームのような見た目の作品を作ることが可能です。また、製品は「開発用ディスク」と「実行用ディスク」の2枚組となっており、作成したゲームデータをメモリーカードに保存すれば、実行用ディスクを持つ友人のPS2でも遊ばせることができるという、配布・共有の楽しみも考慮された設計でした。
サンプルゲームとして、OKE同士が戦う3Dシューティング『Carnage Heat』や格闘ゲーム『徒手空拳』などが収録されており、これらの中身(ソースコード)を解析して改造することが、プログラミング習得の近道となっていました。マニュアルには漫画形式の教本『はじめよう! EZ-BASIC』も同梱されるなど、未来のクリエイターを育成しようという熱意に満ちた一本です。
本作を開発したアートディンクは、都市開発シム『A列車で行こう』シリーズや、ロボットの思考ルーチンを組む『カルネージハート』など、「構築・経営・自動化」といったシステマチックな遊びを得意とするメーカーです。本作『BASIC STUDIO』は、そうした「ユーザーに創造の場を提供する」という同社の哲学が極まった形と言えます。家庭用ゲーム機でBASICが使える環境としては、かつての「ファミリーベーシック」の系譜に連なる存在であり、後のインディーゲームブームを先取りしたような野心的なプロジェクトでした。













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