『ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記』は、中世ファンタジー風の世界を舞台に、国家間の戦争と神話の謎が交錯する重厚な物語が展開されるシミュレーションRPGです。2001年5月24日にエンターブレインからPlayStationで発売され、その緻密なシナリオと骨太な難易度によって多くの熱狂的なファンを生み出しました。
物語は、強大な「ゾーア帝国」の侵攻によって滅亡したリーベリア大陸の諸国を舞台に始まります。プレイヤーは、亡国の王子リュナンと、その親友であり海賊的な冒険者でもあるホームズという二人の主人公を操作します。一方は王道的な軍勢として帝国の打倒を目指し、もう一方は自由奔放に大陸を巡りながら世界の真実を探るという、対照的な視点から物語が進行します。
本作最大の特徴は、物語の節目で行われる「二軍編成システム」です。仲間のユニットをリュナン軍とホームズ軍に振り分ける必要があり、どちらの軍にどの戦力を配置するかが攻略の鍵となります。リュナン軍は正統派のステージ攻略がメインとなりますが、ホームズ軍は過去のマップへ戻って修行やアイテム収集ができる「フリーマップ」が活用できるなど、プレイスタイルの異なる二つの部隊をバランス良く運用する戦略性が求められます。
戦闘システムは、ユニットが個別のスキルを駆使して戦う伝統的な形式を採用しています。キャラクターごとに設定された「クラス」や、レベルアップで習得する特殊技能が戦況を大きく左右します。また、戦闘中に一度でも力尽きたユニットは(一部の例外を除き)二度と復活しないというシビアなルールが適用されており、一手一手に極限の緊張感が漂います。
育成面では、クラスチェンジや武器の修理、スキルの継承といった要素が豊富に用意されています。マップ上には特定のキャラクター同士を隣接させることで発生する会話や、特定の条件下で仲間になる隠しユニットが多数存在し、単なる戦闘の繰り返しに留まらない深いやり込みが可能です。大陸の歴史や伝説を背景とした膨大なテキスト量も相まって、プレイヤー自身が歴史の目撃者となるような没入感を提供しています。
『ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記』は、剣と魔法の世界「リーベリア大陸」の興亡を描いた完全オリジナルの作品です。後に続編的立ち位置の作品として『ベルウィックサーガ』も制作されるなど、独自のシミュレーションRPGシリーズの原点となりました。












コメントを追加