『人魚の烙印』は、人魚伝説が残る閉鎖的な島を舞台に、人知を超えた恐怖と忌まわしい血の謎に迫るホラーアドベンチャー。2000年8月3日にNECインターチャネルからPlayStationで発売され、その陰惨で湿度を感じさせる世界観と独自のシステムにより、多くのプレイヤーに鮮烈な印象を残しました。

物語の主人公である青年・高村翔は、行方不明となった考古学者の父を捜すため、瀬戸内海に浮かぶ孤島「比島(ひじま)」を訪れます。一見、穏やかな離島に見えた比島ですが、そこは独自の信仰と外部を拒む因習に支配された場所でした。翔は島で出会った謎の少女・マナとともに、不老長寿をもたらすとされる「人魚の肉」を巡る凄惨な事件へと巻き込まれていきます。

ゲームプレイの核となるのは、主人公の精神状態を視覚化した「メンタルゲージ」システムです。凄惨な死体を目撃したり、人魚による襲撃を受けたりといった恐怖体験によってゲージが減少していき、限界に達するとゲームオーバーやバッドエンディングに直結します。刻一刻と変化する状況下で、いかに正気を保ちながら島に隠された真実を解き明かすかという、心理的な緊張感が常に付きまといます。

探索パートはフルポリゴンで描かれた不気味なロケーションを移動し、ヒントとなる情報を集めることで進行します。本作に登場する「人魚」は、美しい童話のイメージとはかけ離れた、人を喰らい不老不死の呪いを撒き散らす醜悪な怪物として描かれています。このおぞましいクリーチャーデザインと、三木眞一郎氏をはじめとする実力派声優陣による迫真の演技が、作品の恐怖をより一層引き立てています。

物語はマルチエンディング方式を採用しており、プレイヤーの選択やメンタルゲージの管理、探索の結果によって生存者や結末が激しく変動します。人間の欲望が招いた人魚の呪いとは何なのか、そして翔の身体に刻まれた「烙印」が何を意味するのか。閉鎖環境特有の息苦しさと、じわじわと精神を蝕むような和製ホラーの真髄を堪能できる一作に仕上げられています。

『人魚の烙印』は、NECインターチャネル(現・インターチャネル)がPlayStation向けに制作した完全オリジナルのアドベンチャーゲーム。古来より日本に伝わる「八百比丘尼」や人魚の肉にまつわる伝承を、現代的なサイコホラーの視点で再構築した独自の世界観を持っています。

人魚の烙印