『リズムンフェイス』は、○・△・□という幾何学図形だけで森羅万象を描き出す、奇抜でサイケデリックなリズムペイントアクション(自称RPG)。2000年3月9日にアスミック・エース エンタテインメントからPlayStationで発売され、『LSD』や『東脳』を生み出したマルチメディアクリエイター・佐藤理(OSAMU SATO)氏がプロデュースした、世紀末のゲームシーンを飾るカルト作として展開されました。

本作のコンセプトは「コントローラーのボタン(○・△・□)を押すと、その形が画面に出る」という極めてシンプルなものです。プレイヤーは、テクノやハウス調のBGMに乗って流れてくる「お手本(CPU)」の図形配置を記憶し、リズムに合わせて同じように図形を配置していきます。単なる覚えゲーではなく、図形の位置やサイズを瞬時に判断して入力する必要があり、成功すると画面上にピカソの絵画のような、あるいは前衛的な「顔」が完成します。

ゲームシステムは「まねっこフェーズ」と「フリースタイル」の要素を兼ね備えています。お手本通りに描けば高得点が得られますが、アドリブでオリジナルの図形を混ぜ込むことで芸術点(Artポイント)を稼ぐことも可能です。登場するキャラクターやステージ背景は、佐藤理氏特有の極彩色で無機質なデザインで統一されており、プレイ中は電子ドラッグのようなトリップ感に襲われます。ジャンル名を「**R**hythm **P**aint action **G**ame」の頭文字を取って「RPG」と名乗るなど、人を食ったようなユーモアセンスも本作の魅力(あるいは毒)です。

一見すると子供向けの知育ソフトのようですが、リズム判定はシビアで、後半ステージのBPM変化や複雑な図形構成はゲーマーでも手を焼く難易度です。幾何学模様が脈動し、無機質な顔がこちらを見つめてくる独特のビジュアルは、一度見たら忘れられない強烈なインパクトを残します。

『リズムンフェイス』はオリジナル作品ですが、プロデューサーの佐藤理氏は、バウハウスやロシア構成主義などの現代アートやテクノミュージックに深く傾倒しているアーティストです。本作のビジュアルも、カンディンスキーの抽象画や、初期のテクノポップカルチャーからの影響を色濃く反映しています。

Osamu Sato / LSD