『ザ・占い』シリーズは、日常生活に寄り添う多彩な鑑定メニューを専門特化型のパッケージで手軽に体験できる、実用本位の占いシミュレーション。1999年11月11日にヴィジットからPlayStationで第1作が発売され、2000年にかけて全6タイトルが矢継ぎ早に展開されるという、当時のコンシューマー市場でも異例のリリース形態で注目を集めました。

本作は、1タイトルごとに特定の占術へフォーカスしている点が最大の特徴です。第1作の『恋愛星座占い』を皮切りに、タロット、方位、カバラ、ルーン、九星占星術と、各巻が独立した専門ソフトとして構成されています。これにより、プレイヤーは自分の興味がある占術を深く、かつ安価(定価1,800円〜1,980円)に楽しむことができました。それぞれのソフトには、その占術に精通した監修者のロジックが組み込まれており、生年月日や名前を入力するだけで本格的な鑑定結果が導き出されます。

システム面では、自分や知人のプロフィールを複数登録できる「名簿機能」が中心となります。一度登録したデータはシリーズを通じて共通の資産となり、今日の運勢だけでなく、気になる相手との「相性」を、その巻の占術に則った独自の視点から診断することが可能です。例えば第2作のタロット占いでは、神秘的なカードのグラフィックと共に、カードが示す象徴的な意味やアドバイスを、PlayStationの鮮明な画面でじっくりと読み解くことができます。

演出面も各巻のテーマに合わせた工夫が凝らされています。第4作の『はらぺこクマの開運カバラ占い』のように、親しみやすいキャラクターを案内役に据えた作品もあれば、神秘的な記号や図表を多用した硬派な作品もあり、バラエティに富んでいます。いずれも複雑な操作を必要とせず、コントローラーのボタン操作だけでスムーズに鑑定が進むため、ゲームに不慣れな層でも迷わずに扱える「デジタル実用書」としての完成度が追求されました。

シリーズ末期の第5作と第6作は同日に発売されるなど、コレクション性を高める戦略も取られました。インターネットでの占いが一般的になる前の時代において、家庭用ゲーム機の演算能力を活かして瞬時にバイオリズムや相性を算出できる本作は、友人同士のコミュニケーションツールや、日々の生活を彩るちょっとしたアドバイザーとして活用されました。PlayStationにおける低価格ソフトの可能性を占いの分野で切り拓いた、個性的なシリーズ作品群です。

『ザ・占い』シリーズは、特定の原作を持たないヴィジットオリジナルの実用ソフトです。同社が展開していた『ザ・心理ゲーム』シリーズと共に、PlayStationというマルチメディア機における「ゲーム以外の楽しみ方」を提示し、日常的な鑑定や自己分析を求める層に長く親しまれました。
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