『マリア2 受胎告知の謎』は、神の領域とされる「遺伝子操作」と「クローン技術」の闇に、新米女性記者が切り込むサイエンス・サスペンスアドベンチャー。1999年8月5日にアクセラからPlayStationで発売され、カルト的な人気を誇る前作『マリア 君たちが生まれた理由』の世界観を受け継ぎつつ、オカルト的な心理ホラーから硬派な医療ミステリーへと大胆な転換を図った続編として展開されました。
本作の主人公は、さくらテレビ社会部の新人記者・国友真里亜(くにともまりあ)。彼女は取材対象であった著名な生物学者・亜門博士の殺害事件に巻き込まれ、容疑者となった博士の助手と共に逃亡生活を余儀なくされます。物語の核心にあるのは、タイトルが示唆する「受胎告知」――すなわち、処女懐胎にも似たクローン技術による生命の創造です。プレイヤーは真里亜となり、実写取り込みのムービーと3DCGで描かれた探索パートを行き来しながら、国家規模で隠蔽された恐るべき「M計画」の全貌を暴いていきます。
ゲームシステムにおける最大の特徴は、周回プレイを前提とした「二部構成」のシナリオ展開にあります。1周目は、謎の組織や警察からの追跡を逃れるスリリングな「逃亡編」として進行しますが、クリア後のデータで開始する2周目では、新たな分岐ルート「究明編」への扉が開かれます。ここでは1周目では明かされなかった事件の裏側や、登場人物たちの真の動機が次々と氷解し、プレイヤーを戦慄の真実へと導きます。前作の特徴であった多重人格システムは廃止されましたが、その分、シナリオの密度とSFとしての考証はより深化しています。
ビジュアル面では、当時のアドベンチャーゲームで流行していた「実写ムービー」を効果的に使用しており、役者たちの迫真の演技がシリアスなドラマを盛り上げます。特に、科学の進歩が人間の尊厳を脅かすという重厚なテーマは、発売から四半世紀が過ぎた現代において、より切実なリアリティを持ってプレイヤーに問いかけてきます。エンターテインメントとしてのサスペンスと、知的好奇心を刺激する科学ミステリーが見事に融合した一作です。
『マリア2 受胎告知の謎』はオリジナル脚本による作品ですが、遺伝子工学がもたらす未来とその倫理的課題を描いた点において、映画『ガタカ』や瀬名秀明の小説『パラサイト・イヴ』といった90年代の傑作SF群と共鳴するテーマ性を持っています。













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