『To Heart』は、「ビジュアルノベル」というジャンルを家庭用ゲーム機に定着させ、学園恋愛アドベンチャーの金字塔として語り継がれる作品。1997年にPCで発売された原作を経て、1999年03月25日にアクアプラスからPlayStationで発売されました。その後、2003年にはPCへの逆移植版『ToHeart PSE』が、2004年には『ToHeart2』の限定版特典としてPS2版が、2009年にはPSP版が登場しています。剣と魔法のファンタジーが主流だった当時のゲーム市場において、ごく普通の学園生活と幼馴染や同級生との日常を丁寧に描くというスタイルを確立し、その後の「萌え」文化やキャラクターゲームの在り方に決定的な影響を与えました。

画面全体にテキストが表示される小説のような形式を読み進め、時折現れる選択肢によってヒロインとの関係性を変化させていくシステムが採用されています。プレイヤーは主人公・藤田浩之となり、幼馴染の神岸あかりや、量産型メイドロボットのマルチ、超能力を持つ少女など、個性豊かなヒロインたちと交流を深めます。派手なイベントやドラマチックな事件よりも、放課後の会話や休日の約束といった「何気ない日常の積み重ね」に重きが置かれており、プレイヤー自身がその学園生活の一部であるかのような没入感を生み出します。

特筆すべきは、アンドロイドであるHMX-12「マルチ」の存在と、彼女がもたらした「萌え」の概念の普及です。健気に尽くすメイドロボットというキャラクター造形は、単なる記号的な属性を超えて多くのプレイヤーの心を打ち、現在に至るまでのメカ少女ジャンルの原点の一つとなりました。また、家庭用版では豪華声優陣によるフルボイス化が実現しており、テキストを読む静的な体験に、キャラクターの息遣いという動的な魅力を加えることで、物語の感動をより深く、鮮烈なものにしています。

開発元のアクアプラス(Leaf)は、本作によってビジュアルノベルのパイオニアとしての地位を不動のものにしました。特にシナリオライター髙橋龍也氏や原画の水無月徹氏が生み出した世界観は、後のクリエイターたちに多大な影響を与えています。本作の空気感やキャラクターの魅力をもっと深く知りたい方は、テレビアニメ版の映像ソフトや、多数出版されているアンソロジーコミック、ビジュアルファンブックなどを手に取ることで、その優しい世界にいつまでも浸り続けることができます。

To Heart ビジュアルファンブック

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