『猫侍』(ねこざむらい)は、1999年3月4日にヒューマン株式会社からPlayStation向けに発売された、江戸時代を舞台にした本格派アドベンチャーゲームです。タイトルからはユーモラスな印象を受けるかもしれませんが、実際には時代考証に基づいた重厚な世界観と、渋くハードボイルドな物語が展開される異色の時代劇作品です。
プレイヤーは、猫又の剣客「弟斬り」十兵衛となり、江戸の街で半年間を自由に生き抜いていきます。物語は一本道ながら、180以上のイベントが用意されており、時間帯や登場人物との親密度によって発生条件が変化。イベントの選択によっては登場人物の生死や物語の印象が大きく変わるため、周回プレイによる発見が魅力のひとつです。オープニングも1周目から3周目まで異なる内容が用意されており、4周目以降はランダムで選ばれる仕様となっています。
ゲームシステムは、時間経過や疲労度の概念を取り入れた生活シミュレーション型で、町の探索や人々との交流を通じて物語が進行します。戦闘やミニゲームも存在しますが、あくまで江戸での“猫又としての生活”を楽しむことが主眼に置かれており、攻略よりも雰囲気や人間関係の描写に重きを置いた構成です。
グラフィック面では、ポリゴンで描かれたキャラクターが表情豊かに動き、フェイストラッキングによる滑らかな口パクや演技が高く評価されました。声優陣も実力派が揃い、渋くも哀愁漂う演出を支えています。
発売当時は大きな話題にはならなかったものの、独特の世界観と完成度の高さから、現在では“隠れた名作”として語り継がれています。2009年にはゲームアーカイブスでの配信も行われ、再評価の機会が広がりました。
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