『お嬢様特急(おじょうさまエクスプレス)』は、1998年にPlayStationおよびセガサターン向けに発売された恋愛アドベンチャーゲームで、メディアワークスの読者参加企画を原作としたメディアミックス作品です。企画はあかほりさとる氏、シナリオ構成は花田十輝氏が担当し、ゲーム、小説、漫画、ドラマCDなど多方面に展開されました。

物語の舞台は、日本最北端・稚内から出発し、東京や大阪、博多などを経由して日本を縦断する豪華特急「ヴェガ」。プレイヤーはこの列車に乗り込み、15日間の旅の中でさまざまな女性乗客たちと出会い、会話やイベントを通じて親交を深めていきます。各キャラクターには乗車目的や降車駅が設定されており、プレイヤーの行動次第で彼女たちの旅の行方やエンディングが変化します。

ゲームシステムには「MDS(マルチブル・デュアル・システム)」が採用されており、キャラクターの思考パターンによって出現場所が変化するため、周回プレイでも新たな発見がある構造になっています。また、列車内でのミニゲームや観光地でのイベント、食事や広告など、旅情を感じさせる演出も豊富です。

登場キャラクターは十数名におよび、声優陣には半場友恵、長沢美樹、山崎和佳奈、宮村優子、伊藤美紀、氷上恭子など、当時の人気声優が多数参加。各キャラクターには個別のエンディングが用意されており、恋愛要素と旅のドラマが交錯する構成となっています。

列車という閉ざされた空間と、移動による出会いと別れのドラマを融合させた本作は、90年代後半の恋愛アドベンチャーの中でも異彩を放つ一本です。懐かしさと旅情、そしてちょっぴり甘酸っぱい青春の香りが詰まった作品といえるでしょう。