『秘密結社Q』は、1998年にライトスタッフよりプレイステーション向けに発売されたシミュレーションゲームです。本作は、特撮ヒーロー作品の構造を模したパロディ色の強い設計で、プレイヤーが悪の組織「秘密結社Q」の幹部として新東京市の侵略作戦を遂行するという、従来のヒーロー視点とは逆転した構成が採用されています。各話はオープニング、作戦ブリーフィング、戦闘、エンディング、次回予告というテレビ番組風のフォーマットで展開され、特撮番組の様式美を再現する演出が随所に盛り込まれています。
ゲームシステムは2Dのターン制シミュレーション形式で構成されており、地形効果や反撃専用技、ユニットごとの装備差など、戦術性を重視した設計が施されています。ただし、ユニットのレベルアップは作戦ごとにリセットされるため、育成要素は排除されており、各作戦を定められた戦力で攻略する詰将棋的な構造となっています。戦闘員の装備にはピコピコハンマーや壺などユニークなものが含まれ、ギャグ要素と戦術性が混在する設計です。
物語面では、元テロリストの主人公「レイジ」が秘密結社Qに勧誘され、幹部として様々な作戦を指揮する展開が描かれます。作戦内容は幼稚園バスのジャックやテレビ局の破壊など、荒唐無稽ながらも戦略的意図が語られる構成で、ギャグとシリアスの落差が激しい演出が特徴です。正義のヒーロー「機動刑事ライオット」や「モモヴァルス」などが登場し、悪の組織との対決が繰り広げられる中で、主人公の葛藤や組織の真意が徐々に明かされていきます。
演出面では、主題歌やエンディング曲を開発スタッフが自ら歌唱しており、軍歌調の楽曲やウルトラQ風の映像など、特撮文化への深いリスペクトが感じられる構成です。各話のタイトルや怪人の設定、戦闘演出に至るまで細かなネタが仕込まれており、特撮ファンに向けたこだわりが随所に見られます。ライトスタッフの解散前最後の作品であり、独自性と情熱が詰まった一作として記録されています。
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