『こみゅにてぃぽむ』は、絵本のような温かいビジュアルの中に、本格的なアクションRPGと国作りシミュレーションの要素を絶妙に融合させた意欲作。オリジナル版は1997年10月30日にフィルインカフェからPlayStationで発売され、後にパッケージを一新した再販版『こみゅにてぃぽむ ~思い出を抱きしめて~』がファミリーソフトから展開されました。
本作の主人公は、魔法使い見習いの少女ルル。彼女の住む世界には、ウサギのような白くてふわふわした不思議な生き物「ぽむ」が生息しています。ある日、村の家畜が襲われる事件が発生し、大人たちがポムを犯人だと決めつけて駆除しようとする中、ルルはポムたちの無実を証明するために真犯人探しの冒険へと旅立ちます。物語は一見メルヘンチックですが、人間と異種族の共存や偏見といったテーマが根底に流れており、子供から大人まで楽しめる深みを持っています。
ゲームシステムは『ゼルダの伝説』を彷彿とさせる見下ろし型の2DアクションRPGをベースにしています。最大の特徴は、フィールド上で仲間にしたポムを最大3匹まで連れて歩ける点です。ポムには「長い舌で杭に捕まる」「体を膨らませて空を飛ぶ」「炎を吐く」といった多彩な特殊能力があり、これらを駆使してダンジョンの仕掛けを解いていくパズル要素が充実しています。操作性は非常に軽快で、ドット絵で描かれたキャラクターたちが滑らかに動き回る様子は、技術力に定評のあった開発元フィルインカフェの職人芸を感じさせます。
さらに本作には、冒険の拠点となる「こみゅにてぃ(ポムの村)」を発展させるシミュレーション要素が搭載されています。集めたポムたちに指示を出して、畑を耕させたり、家やカジノなどの施設を建設させたりすることで、村は賑やかになり、冒険に役立つアイテムも手に入るようになります。なお、後に発売された『~思い出を抱きしめて~』は、開発元の倒産に伴い権利を引き継いだファミリーソフトによる「廉価再販版」であり、パッケージイラストやマニュアルが刷新されていますが、ゲーム内容自体はオリジナル版と同一です。
『こみゅにてぃぽむ』は特定の原作を持ちませんが、開発元のフィルインカフェは格闘ゲーム『あすか120%』シリーズなどで知られ、美少女キャラクターやドット絵アニメーションの表現に定評がありました。本作はその技術がRPGというジャンルで遺憾なく発揮された、同社後期の隠れた名作として愛されています。













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