『情熱☆熱血アスリーツ ~泣き虫コーチの日記~』は、陸上競技に青春を捧げる男たちの汗と涙、そして禁断の領域に片足を突っ込んだ愛憎劇を描く、異色の育成シミュレーション。1997年10月9日にアスミックからPlayStationで発売され、その暑苦しいまでのキャラクター描写と、スポーツマンシップを根底から揺るがす過激なゲームバランスで、一部の層に強烈なインパクトを残しました。

本作のプレイヤーは、とある企業の陸上スポーツ課長に任命された主人公「ゆうすけ」となり、個性的な陸上選手たちを指導して世界大会での優勝を目指します。ゲームの基本は、スケジュールの管理や練習メニューの指示を行うオーソドックスな育成シミュレーションですが、本作最大の特徴は、指導(スキンシップ)において「ボタン連打」が求められる点にあります。コーチの情熱を選手に伝えるためには、コントローラーのボタンをひたすら連射しなければならず、その熱量が選手のパラメータ上昇に直結するという、フィジカル重視のシステムが採用されています。

育成対象となる選手たちは、いずれも筋骨隆々な男性キャラクターばかり。彼らとの会話イベントは、スポーツ根性もの特有の熱さを通り越して、どこか「ボーイズラブ」を想起させる妖艶な雰囲気が漂っています。タイトルにある「泣き虫コーチの日記(ダイアリー)」というサブタイトルや、「コーチの手って、あったかい。」というキャッチコピーからも察せられる通り、単なる競技の勝敗以上に、コーチと選手との濃密な人間関係にスポットが当てられています。

しかし、その実態はシビアな資金管理と、勝つためには手段を選べない過酷な現実が待っています。賞金で運営費を稼がなければゲームオーバーとなるため、時には選手の健康を犠牲にしてでも「ドーピング」に手を染めざるを得ない局面も訪れます。熱血と背徳が同居する独特の世界観は、プレイヤーに「勝利とは何か、愛とは何か」を問いかける怪作として、プレイステーション史の片隅で異彩を放ち続けています。

『情熱☆熱血アスリーツ』は特定の原作を持たないオリジナル作品です。開発・発売のアスミック(現:アスミック・エース)は、映画配給会社としても知られており、『ドカポン』シリーズや『LSD』など、一癖も二癖もあるゲームを世に送り出してきたメーカーです。

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