『火竜娘 柳判官編・高悠環編』は、1997年9月25日にガストよりPlayStation向けに発売された3Dアドベンチャーゲームであり、藤水名子の小説『色判官絶句』を原作とする作品である。ジャンルは「ビジュアルノベル的メンタルアドベンチャーゲーム」とされ、2枚組ディスクにより異なる主人公視点の物語が展開される構成となっている。
物語の舞台は中国・明朝末期の港町「寧波(ニンポー)」であり、柳禎之(柳判官)編と高悠環(火竜娘)編の2編構成となっている。柳判官編では、皇帝の密命を受けて不正取引の調査に訪れた密直指・柳禎之が主人公となり、町の裏事情や人間関係に踏み込んでいく。一方、高悠環編では、剣術に長けた18歳の少女・高悠環が主人公となり、町の権力構造や家族の問題に直面しながら成長していく。両編は同一の時間軸と舞台を共有しており、異なる視点から同一の事件や人物を描く構成が採用されている。
ゲームシステムは、3Dポリゴンで表現された寧波の街を自由に探索し、イベントを発生させて物語を進行させる形式である。時間の概念が導入されており、午前6時から翌午前3時までが行動可能時間となっている。特定の時間帯でなければ入れない施設や、時間によって営業状況が変化する店舗なども存在する。また、サブイベントの選択や行動によって主人公の性格が変化し、最終的なエンディングにも影響を与えるマルチエンディング構成が採用されている。
演出面では、登場人物の一部にボイスが実装されており、重要な局面では音声付きのイベントが展開される。また、作中の中国語由来の語句には解説機能が付属しており、原作小説の文体や世界観を尊重した設計がなされている。BGMは中国風の旋律をロック調にアレンジしたものなどが採用されており、特に大通りのテーマ曲は高い評価を受けている。
一方で、3Dマップの視界が極端に狭く、移動操作が不自由である点や、通行人の移動速度が異常に速く話しかけづらい点、セーブが屋外でしか行えない点など、操作性やUIに関する問題が多数指摘されている。また、グラフィックの粗さや視点切り替えの不自然さ、ボイスの棒読みなども評価を下げる要因となっており、総じて技術的な完成度の低さが目立つ作品とされている。
とはいえ、原作に基づいた重厚なシナリオや、豊富なサブイベント、性格変化による分岐構造など、読み物としての完成度は一定の評価を受けており、当時のガスト作品としては異色の試みがなされたタイトルである。
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