『秘・宝・王 ~もうお前とは口きかん!!~』は、その衝撃的なサブタイトルが示す通り、プレイヤー同士の友情に修復不可能な亀裂を入れることを目的としたかのような、殺伐としたトレジャーハンター・ボードゲーム。1997年4月25日にレイ・アップ(ソネット)からPlayStationで発売され、ピラミッドや古代遺跡を舞台に、一攫千金を夢見るハンターたちが仁義なき足の引っ張り合いを繰り広げます。

本作は最大4人で遊べるすごろく形式のボードゲームですが、純粋な戦略よりも「運」と「他者への妨害」に重きが置かれています。プレイヤーはサイコロを振ってマップを進み、秘宝を入手して換金し、最終的に最も多くの資産を得た者が勝者となります。しかし、その過程で発生するトラップやイベントは理不尽そのものであり、せっかく集めた財産が一瞬で無に帰すことも珍しくありません。相手を落とし穴に嵌めたり、アイテムで直接攻撃したりといった妨害工作がシステムの根幹を成しており、ゲームが進むにつれてプレイヤー間の会話がなくなり、険悪な空気が漂い始める展開こそが本作の醍醐味といえます。

マップ上のグラフィックやキャラクターのドット絵は丁寧に作られていますが、ゲームバランスは大味であり、サイコロの出目や乱数による理不尽な展開に翻弄されることが多々あります。「もうお前とは口きかん!!」という言葉は、敗者が勝者に吐き捨てる言葉であると同時に、開発者がプレイヤーに突きつけた挑戦状のようにも響きます。現在では中古市場での流通量が少なく、プレミアソフト化している側面もありますが、その希少性が逆に「遊んだことのある者が少ない伝説の友情破壊ゲーム」としての神秘性を高めています。

『秘・宝・王』はオリジナル作品ですが、遺跡探検をテーマにしたボードゲームという点では、名作『ラー(Ra)』や『カルカソンヌ』などのドイツゲームに通じる雰囲気を持っています。ただし、本作の妨害要素の陰湿さは、日本独自の「桃鉄」や「ドカポン」の系譜に位置します。

ドカポンシリーズ