『HASHIRIYA 狼たちの伝説』は、峠やサーキットを舞台にスピードに命を懸ける若者たちの群像劇を描いたレーシングゲーム。1997年4月18日に日本物産からPlayStationで発売されました。

本作は、前年に同社から発売された『デッドヒートロード』の流れを汲む作品ですが、単なる続編にとどまらず、ストーリー性とキャラクター性を大幅に強化した意欲作です。プレイヤーは10人以上の個性的な「走り屋」たちの中から一人を選び、それぞれの視点でライバルたちとのバトルを繰り広げます。物語はキャラクターごとに並行世界のように展開し、あるシナリオでは敵だった相手が別のシナリオでは良き理解者になるなど、多角的な視点から彼らの人間模様を垣間見ることができます。

ゲームシステムは、当時のレースゲームとしては珍しく、挙動に独特のクセがあります。ドリフトを試みると車体が極端に横を向くなど、制御には慣れが必要ですが、それを乗り越えてコーナーをクリアした時の達成感はひとしおです。また、演出面における日本物産らしい独特のセンスも見逃せません。メニュー画面には実写風のアイコンが並び、オープニングムービーでは明朝体の文字と実写映像が交錯するスタイリッシュかつシュールな映像が流れます。登場する車種は実在のスポーツカーをモデルにしつつも架空の名称が与えられており、それらをカスタマイズして自分だけのマシンを作り上げる楽しみも用意されています。

ストーリーモード以外にも、自由にコースや時間帯を設定できるフリーランモードや、ストイックに記録を狙うタイムアタックモードを搭載しており、一人の走り屋として孤独な戦いに没頭することも可能です。レースクイーン姿のヒロイン「早見奈々」をはじめとするキャラクターたちの濃い個性と、夜の峠を切り裂くヘッドライトの光が、90年代後半の走り屋ブームの熱気を今に伝えています。

本作はオリジナル作品ですが、開発元の日本物産(ニチブツ)は、アーケードゲームの黎明期から活躍する老舗メーカーです。『ムーンクレスタ』や『テラクレスタ』といったシューティングゲームの名作で知られる一方、麻雀ゲームなどでも独自の地位を築いていました。本作に見られる「硬派なテーマの中に漂う独特のB級感やシュールさ」は、同社の多くの作品に通底する魅力であり、熱狂的なファンを生む要因となっています。また、題材となっている「峠の走り屋」文化は、漫画『頭文字D』などの影響で当時社会現象となっていました。

漫画『頭文字D』(講談社)
※90年代の走り屋ブームを牽引し、本作のようなゲームが生まれる土壌を作った金字塔的傑作です。

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