『公開されなかった手記』は、3D空間で描かれる閉鎖的な洋館を舞台にした、一人称視点のホラーアクションアドベンチャー。1997年1月17日にサンソフトからPlayStationで発売されました。

本作の主人公は、捏造記事やニセ心霊写真で食いつなぐ三流オカルト記者・新堂一哉。彼は「行方不明になった娘を探してほしい」という依頼を受け、相棒の神矢千里と共にヨーロッパの辺境にある古ぼけた館へと足を踏み入れます。そこで彼らを待っていたのは、偽物ではない「本物の怪異」と、運命や眠りを司る「死神」たちでした。プレイヤーは新堂の視点(FPS視点)で館を探索し、ショットガンなどの限られた武器でモンスターを撃退しながら、洋館に隠された謎を解き明かしていきます。

このゲームを唯一無二の存在にしているのが、「まぶたシステム」と呼ばれる独特な体力表現です。主人公がダメージを受けると、画面の上下から黒い帯が降りてきて、まるで「まぶたが重くなる」かのように視界が狭まっていきます。瀕死の状態では視界が一本の細い線になり、周囲の状況がほとんど見えなくなるという演出は、プレイヤーに「意識が遠のく恐怖」を擬似体験させます。また、当時のPSソフトとしては珍しい光源処理(ポイントライト)を駆使しており、暗闇の中でランプの灯りだけを頼りに進む心細さが、独特の没入感を生み出しています。

操作性の重さや、敵の硬さ、そして独特すぎるシステムゆえに、発売当時は「難解な作品」として扱われることもありましたが、その容赦のない難易度と、安易なBGMに頼らない静寂の恐怖演出は、現在でも「早すぎた野心作」として一部で熱狂的に支持されています。海外では『The Note』というタイトルで発売され、日本のホラーゲーム黎明期を語る上で欠かせない一本となっています。

本作はオリジナル作品であり、開発は「チームバグハウス」が担当しました。彼らは本作において、当時としては先進的な「主観視点での完全3D探索」に挑戦しています。主人公の設定が「ニセ心霊写真を作る記者」である点は非常にユニークで、1970年代〜90年代に流行したオカルトブームや、怪しげな実話系怪談雑誌の雰囲気が色濃く反映されています。「真実かどうかわからない手記」という体裁をとることで、プレイヤーを虚実の狭間へと誘う手法は、ファウンド・フッテージ(モキュメンタリー)作品の先駆けとも言えるでしょう。

映画『オーメン』(1976年)
※「写真に写り込む不吉な予兆」や「西洋の館で起こる怪異」という点で、本作のクラシックなホラー雰囲気と通底する名作です。

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