『ピットボール』は、近未来の銀河系を舞台にしたバイオレンスあふれる架空のスポーツアクション。1996年12月6日にココナッツジャパンエンターテイメントからPlayStationで発売されました。

本作は、アイスホッケー、アメリカンフットボール、バスケットボールを悪魔合体させ、さらに「ルール無用の暴力」をトッピングしたような過激なスポーツゲームです。プレイヤーは、エイリアンやサイボーグといった異形の戦士たち12人の中から一人を選び、閉鎖されたアリーナ「ピット」へと足を踏み入れます。目的はただ一つ、ボールを奪い、相手ゴールに叩き込むこと。しかし、その過程で相手を殴ろうが、壁のトラップに突き飛ばそうが、一切のお咎めはありません。むしろ、観客たちは激しいぶつかり合いと流血を求めて熱狂します。

開発を手掛けたのは、イギリスのデベロッパー「Attention to Detail (ATD)」。後に高速レースゲーム『ロールケージ』などを生み出す技術力のあるスタジオであり、本作でもその片鱗が見られます。3D空間を縦横無尽に滑り回るスピード感と、テクノサウンドが響くサイバーパンクな雰囲気は、いかにも90年代の洋ゲーといった趣です。日本版においても、キャラクターデザインやボイスは海外版のテイストが色濃く残されており、独特の「バタ臭さ」が漂います。

一人用モードでは、銀河最強を目指して勝ち抜いていきますが、途中で武器の購入やステータス強化といった育成要素もあり、単調になりがちなスポーツゲームに深みを与えています。しかし、本作の真価はマルチタップを使用した最大4人での対戦プレイにあります。友人の操作するキャラクターを背後から強襲したり、ゴール目前でタックルしてボールを奪ったりといった、友情破壊スレスレの泥仕合こそが、この狂ったスポーツの正しい楽しみ方と言えるでしょう。

本作を日本に紹介したココナッツジャパンは、パチンコシミュレーター『パチ夫くん』シリーズで知られる一方、『フィジェッツ』や『ポエド』といったアクの強い洋ゲーを数多くローカライズしていたメーカーです。本作『ピットボール』もそのラインナップの一つであり、当時の日本のゲームにはない「殺伐とした空気」と「大味だが盛り上がる対戦ツールとしての魅力」を持っています。開発元のATDは、後に『ロールケージ』シリーズでその物理演算能力を遺憾なく発揮することになります。

映画『ローラーボール』(1975年)
※「近未来の殺人スポーツ」というジャンルの金字塔。本作が影響を受けたであろう、暴力と興奮が支配するアリーナの原点がここにあります。

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