『エキスパート』は、テロリストに占拠されたハイテクビルを奪還するため、特殊部隊の一員となって戦うファーストパーソン・シューティング(FPS)。1996年5月31日に日本物産(ニチブツ)からPlayStationで発売されました。
本作は、海外で『DOOM』などが旋風を巻き起こしていたFPS黎明期において、日本メーカーである日本物産が家庭用ゲーム機向けに独自開発した意欲作です。プレイヤーは警視庁の特殊部隊「EXPERT」の隊員「工藤たくや」となり、武装テロリストグループに占拠された全20フロア(設定上は100階建てとも言われる)のインテリジェントビルへ単身潜入します。任務の目的は、各フロアに囚われた人質の救出と敵の殲滅、そして最上階にあるマザーコンピュータの破壊です。
ゲームシステムは典型的なFPSスタイルですが、ステージ開始時にハンドガン、サブマシンガン、ショットガン、グレネードランチャーなどから携行武器を選択するブリーフィング画面がある点が特徴です。弾薬には限りがあり、敵を倒して補充するか、マップ内に落ちているアイテムを回収する必要があります。また、ビル内部には敵兵だけでなく、センサー式の爆弾やトラップが仕掛けられており、単なる撃ち合いだけでなく慎重な索敵も求められます。3Dグラフィックの描画速度や操作性には当時のハードウェアゆえの粗さが見られますが、無機質なビルの通路を探索する緊張感や、脱衣麻雀などで知られるニチブツが硬派なFPSに挑戦したという事実が、一部のゲームファンの記憶に残っています。
本作の開発元である日本物産(ニチブツ)は、アーケードゲームの黎明期から『ムーンクレスタ』や『クレイジー・クライマー』などの名作を生み出し、後には脱衣麻雀ゲームの最大手として知られた老舗メーカーです。本作のような3Dアクションへの参入は当時としては珍しい試みでしたが、同社のチャレンジ精神を象徴する一本と言えます。ニチブツのゲーム史や、当時のFPSブームの背景を深く知りたい方には、レトロゲーム全般を扱った書籍やカタログ本が資料として役立ちます。













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