『閉ざされた病棟 -DEMENTIUM II-』は、不気味な精神病院と異世界の狂気が交錯する中で脱出を目指す一人称視点のサバイバルホラーアクション。2010年9月30日にインターチャネルからニンテンドーDSで発売され、ハードの限界に挑んだグラフィックと音響演出により前作を凌ぐ恐怖を提供しました。

物語は、前作の主人公ウィリアム・レッドムーアが「ブライト・ドーン治療センター」という不気味な施設で目を覚ますところから始まります。ウィリアムは脳手術を受け、過去の記憶が混濁する中、再び「ドクター」と呼ばれる人物の邪悪な実験に巻き込まれていきます。現実の世界と、壁や床が剥がれ落ちて血肉に覆われる地獄のような異世界がシームレスに入れ替わる演出は、プレイヤーを常に予測不能な恐怖へと誘います。

ゲームシステムにおける最大の進化点は、前作で要望の多かった「懐中電灯と武器の同時使用」が可能になったことです。暗闇を照らしながら敵を射撃したり殴りつけたりできるようになり、よりダイレクトでスピード感のある戦闘が展開されます。また、しゃがみ移動やジャンプといったアクションが追加されたことで、通風孔への潜入や足場の悪い場所の探索など、ステージ攻略の自由度と立体感が飛躍的に向上しました。

探索の舞台は、無機質な病院内にとどまらず、吹雪の舞う屋外や、おぞましい祭壇のような広間などバリエーション豊かに構成されています。登場するクリーチャーも一新され、切断された手足を持つ異形や巨大なボスとの戦闘では、限られた弾薬や回復アイテムをやりくりするサバイバルホラー特有の緊張感が味わえます。ニンテンドーDSの性能をフルに引き出した秒間60フレームの滑らかな描画は健在で、直感的なタッチ操作による視点変更がストレスのないプレイフィールを支えています。

音声演出へのこだわりも徹底されており、ヘッドホンを使用することで、背後から忍び寄る足音や壁の向こうからの囁き声が臨場感たっぷりに響きます。タッチパネルに自由に書き込みができる「メモ帳機能」も継承されており、複雑な謎解きや暗号の管理を自筆の記録で行うアナログな楽しみが、孤独な脱出劇に深い没入感を与えています。前作の謎を解き明かす完結編として、携帯機におけるホラーゲームの到達点の一つといえる一作です。

『閉ざされた病棟 -DEMENTIUM II-』は、Renegade Kidが開発した『Dementium: The Ward』の続編です。ニンテンドーDSで本格的なFPSホラーを実現した先駆的なシリーズであり、独自の狂気的な世界観は後にPCや現行機向けのリマスター版へと継承されました。

DEMENTIUM 閉鎖病棟