『こころに染みる毛筆で書く相田みつをDS』は、相田みつを氏の魂を揺さぶる言葉と独特な筆致をタッチペンでなぞり、心を整える書画シミュレーション。2006年11月30日にアーテインからニンテンドーDSで発売されました。

本作は、相田みつを美術館の全面的な監修のもと、氏の遺した珠玉の作品群を「なぞり書き」という形式で追体験できる実用ソフトです。ニンテンドーDSのタッチパネルを半紙に見立て、墨の質感や毛筆特有の「止め・跳ね・払い」をデジタル技術で再現しています。静寂の中で文字をしたためることで、忙しい日常から離れて自分自身を見つめ直す「癒やし」の時間を提供することが本作の大きなテーマとなっています。

最大の特徴は、タッチペンのスライド速度に応じて線の表情が変化する独自の描画エンジンです。ペンを速く動かせば墨が「かすれ」、ゆっくりと動かせば力強く「太い線」が引ける仕組みになっており、筆圧感知機能のないハードウェアの制約を工夫で補っています。これにより、相田みつを氏ならではのダイナミックかつ繊細な書風を、直感的な操作で再現することが可能になりました。

メインの「書写」モードでは、「人間だもの」をはじめとする代表的な作品を100点以上収録しています。お手本を朱筆で表示させ、その上をなぞることで、文字の形だけでなく氏が込めた言葉の重みを一つひとつ噛みしめることができます。完成した作品には自分の名前を入れ、最後に「落款(はんこ)」を押すことで、自分だけの書画としてギャラリーに保存し、いつでも鑑賞できます。

対局的な要素として、日々の練習を記録するカレンダー機能や、お手本なしで自由に文字や水墨画を描けるモードも搭載されています。また、作品を閲覧できる「こころのギャラリー」では、詩の背景や解説もあわせて読むことができ、鑑賞ツールとしての完成度も追求されました。文字を練習する実用的な側面と、詩の世界に浸る教養的な側面を併せ持った、大人のための嗜みといえる一作です。

『こころに染みる毛筆で書く相田みつをDS』は、戦後から平成にかけて活躍した詩人・書家である相田みつを氏を題材にしています。「人間だもの」などの平易な言葉で生きる勇気を与える独特の作品群は、宗教家や哲学者からも高く評価され、今なお世代を超えて多くの人々に愛され続けています。

相田みつを