『ルパン三世 海に消えた秘宝』は、往年のTVアニメ「第2シリーズ(赤ジャケット)」の空気を完全再現し、プレイヤー自身がその世界に飛び込むシネマティック・アドベンチャー。2003年7月31日にアスミック・エース エンタテインメントからニンテンドーゲームキューブで発売され、当時のオリジナルキャストが集結した豪華なキャスティングと、アニメーション制作会社トムス・エンタテインメントが手掛けた本格的な映像演出で話題を呼びました。
本作の最大の特徴は、ルパン三世を操作するのではなく、オリジナルキャラクターである12歳の少年「テオ」の視点から物語が進行する点にあります。地中海の港町でサルベージを手伝うテオは、記憶を失った少女リアナと出会い、彼女の秘密を巡るルパン一味と謎の組織の争奪戦に巻き込まれていきます。プレイヤーはテオとなり、憧れのヒーローであるルパンたちと会話を交わし、時には協力してピンチを切り抜けることで、彼らの「大人のかっこよさ」を特等席で体験することになります。
ゲームシステムは、3D空間で描かれたフィールドを探索し、聞き込みやアイテム収集を行うアドベンチャーパートと、随所に挿入される「リアクションイベント」で構成されています。イベントシーンでは、画面の指示に従ってタイミングよくボタンを押すことで、ルパンならではのコミカルなアクションや、銭形警部からの華麗な逃走劇が展開されます。失敗すると即ゲームオーバーになることもありますが、成功した時のアニメーションのような滑らかな動きは必見です。
一方で、アドベンチャーゲームとしての自由度は低く、基本的には一本道のシナリオを追体験する「見るゲーム」としての側面が強い作品です。また、イベント中のボタン入力判定がシビアな場面や、ボイススキップ機能の欠如など、システム周りの快適さには難があります。しかし、栗田貫一、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗といった当時のレギュラー声優陣によるフルボイス収録は圧巻で、往年のファンにとっては、まさに「自分でプレイする新作テレビスペシャル」といえる贅沢な一作です。
『ルパン三世 海に消えた秘宝』のベースとなっているのは、1977年から1980年にかけて放送されたTVアニメ『ルパン三世(第2シリーズ)』です。赤いジャケットを着たルパンが活躍するこのシリーズは、大野雄二によるジャズサウンドや、コミカルとハードボイルドが同居した作風で、現在のルパン三世のパブリックイメージを決定づけました。













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