『スキャンハンター 〜千年怪魚を追え!〜』は、釣り竿ではなく「DNAスキャナー」を武器に深海生物を追い回す、近未来を舞台にした異色のフィッシング(?)アクション。2002年11月15日にパシフィック・センチュリー・サイバーワークス・ジャパン(PCCW Japan)からゲームボーイアドバンスで発売され、魚を「釣る」という既存の概念を捨て去り、カメラのファインダー越しに獲物を追跡するような独自のスキャンシステムを提唱した野心作として展開されました。

本作の舞台は、環境破壊が進んだ近未来。プレイヤーは小学4年生の少年となり、小型潜水艇から射出される自律型スキャンマシン「バディ」を操作して、水中に潜む生物たちのDNAデータを収集します。ゲームプレイは、魚影を見つけて糸を垂らす従来の釣りゲームとは一線を画します。水中でターゲットを発見し、ロックオンした後は、逃げ回る相手を画面中央のフレーム内に捉え続けなければなりません。スキャンは「種類の特定」「サイズの計測」「全データの取得」という3段階のプロセスを経て完了し、その間ひたすら魚を追いかけ回す操作感は、釣りというよりも「水中FPS」や「ドッグファイト」に近い緊張感があります。

収録されている生物は、実在する魚介類から古代魚、さらには「ポセイドン」と呼ばれる幻の怪魚まで約95種類。スキャンして持ち帰ったDNAデータからはクローン(魚拓代わり)を生成できるほか、獲得したポイントでマシンのパーツをカスタマイズし、より深海へ、より俊敏な獲物へと挑むことが可能です。ストーリーモードでは、謎の博士やライバルたちとの交流を通じて「千年怪魚」の謎に迫る冒険活劇が描かれます。

発売当時の流通量が少なかったことや、他に類を見ない独特なゲームシステムが再評価されたことから、現在では中古市場で価格が高騰するプレミアソフトとしても知られています。「釣らずに撮る」という斬新なアプローチは、フィッシングゲームの歴史においても極めて特異な存在感を放っています。

『スキャンハンター』はオリジナル作品ですが、未知の生物を探査機で追いかけるというコンセプトは、深海探査や海洋生物学のフィールドワークをエンターテインメント化したものといえます。また、発売元のPCCW Japanは、かつてのジャレコの知的財産権を一時保有していた企業としても知られています。

深海生物 大図鑑