『ザ・キング・オブ・ファイターズ’99 EVOLUTION』は、1999年にアーケードで稼働した『KOF’99』をベースに、2000年3月30日にドリームキャスト向けにリメイク移植された2D対戦格闘ゲームです。KOFシリーズとしては初めて3D背景を導入し、アニメーションオープニングや新規UIなど、ビジュアル面での刷新が施された意欲作です。
本作は「ネスツ編」三部作の第1章にあたり、前作までの「オロチ編」から世界観が一新されました。新主人公「K’(ケイ・ダッシュ)」が登場し、草薙京の炎の力を移植された彼が、謎の組織「ネスツ」との戦いに巻き込まれていくという、サイバーパンク色の強い物語が展開されます。草薙京や八神庵は隠しキャラクターとして登場し、シリーズのファンにも配慮された構成となっています。
ゲームシステム面では、シリーズ初の4人チーム制(3人+ストライカー)を採用し、援護キャラを呼び出して攻撃やサポートを行う「ストライカーマッチ」が導入されました。さらに、ゲージを消費して発動する「カウンターモード」や「アーマーモード」など、戦術性を高める新要素も追加されています。ドリームキャスト版では、これらのシステムに対するバランス調整やバグ修正が施され、より洗練された対戦環境が実現されています。
また、ドリームキャスト版では新たに「エクストラストライカー」システムが導入され、『KOF2000』や他作品からのゲストキャラクターがストライカー専用キャラとして登場。バトルアビリティを貯めることで解禁できる仕組みとなっており、やり込み要素も充実しています。さらに、ネオジオポケットとの連動機能により、ポイントを使ってストライカーの強化も可能でした(日本版のみ)。
演出面では、3D化された背景ステージや新規アニメーションによるオープニングムービーが高く評価されており、特にステージ5の用水路では、ラウンドが進むごとにエレベーターが作動して降下するという演出が話題となりました。BGMはアレンジ版(AST)が採用され、音質も向上。一部のキャラクターには新規ボイスも追加され、臨場感が増しています。
一方で、VGA出力に非対応である点や、ネオジオCD版やPS版にあったギャラリーモードやスペシャルエンディングが未収録である点など、惜しい部分も存在します。それでも、ドリームキャストの性能を活かしたグラフィックと演出、そしてバランス調整によって、シリーズの中でも完成度の高い移植作として評価されています。
後に本作は、Windows版やPlayStation 2の『ネスツ編コレクション』にも収録され、より多くのプレイヤーに親しまれることとなりました。特にPS2版ではOSTとASTの切り替えが可能となり、ファンにとっては嬉しい仕様変更となっています。
『KOF’99 EVOLUTION』は、シリーズの新章を告げる作品として、そしてドリームキャスト時代の格闘ゲームの代表作として、今なお語り継がれる存在です。
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