『タクラマカン 敦煌傳竒(とんこうでんき)』は、シルクロードの神秘的な遺跡を舞台にした実写取り込み型のパズルアドベンチャー。1996年11月22日にパトラからPlayStationで発売され、翌月12月27日にはセガサターン版『タクラマカン ~敦煌傅奇~』もリリースされました。
本作は、台湾で大ヒットしたPCゲームを日本の家庭用ハード向けにローカライズした作品です。物語の舞台は、中国西北部のタクラマカン砂漠に位置する世界遺産「敦煌(とんこう)」。かつて万病を癒すとされた伝説の泉「観音泉」が、邪悪な幻魔によって封印されてしまいました。プレイヤーは、菩薩の導きに従い、遺跡内部の「水相洞」「木相洞」といった6つの洞窟を巡り、そこに仕掛けられた数々の謎を解き明かして泉を蘇らせることを目指します。
ゲームシステムは、名作『MYST』を彷彿とさせる、一枚絵の背景をクリックして移動・調査するスタイルを採用しています。最大の特徴は、実際の敦煌莫高窟(ばっこうくつ)などで撮影された美しい実写映像や写真をふんだんに使用している点です。壁画に描かれた「飛天」を修復したり、仏像の謎を解いたりと、現地の空気をそのまま閉じ込めたようなグラフィックは資料的価値すら感じさせます。
しかし、その幻想的な見た目とは裏腹に、中身は極めて硬派でストイックなパズルゲーム集です。「神経衰弱」「ハノイの塔」「ライツアウト(盤面のライトを全て消すパズル)」など、古典的かつ高難易度な全14種類のロジックパズルがプレイヤーの行く手を阻みます。ヒント機能はあるものの、直感だけでは解けない数学的な思考を要求される場面も多く、静寂の中でひたすら知恵の輪を解き続けるような孤独な闘いが待っています。なお、PS版とSS版ではタイトルの漢字表記(傳竒/傅奇)など細部に違いが見られますが、基本的なゲーム内容は同一です。
本作の舞台となっている敦煌は、かつてシルクロードの分岐点として栄えたオアシス都市です。特に「莫高窟」は、4世紀から約1000年にわたって掘り続けられた仏教遺跡であり、壁画や塑像の美しさから「砂漠の大画廊」とも称されます。ゲーム内に登場する「飛天」のモチーフや、極彩色の仏教美術は、この歴史的遺産を忠実に再現しようとしたものです。悠久の歴史に思いを馳せながらプレイすることで、単なるパズル以上の没入感を味わうことができます。
小説『敦煌』(井上靖/新潮文庫 他)
※西夏文字の謎や、砂漠に消えた経典の行方を描いた歴史小説の傑作。この地が持つロマンを深く理解するためのバイブルと言えます。













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