秋の夕暮れ、公園のベンチに腰掛ける老夫婦、正雄さんと美津子さん。風に舞う枯葉が淡い光に照らされ、夕焼け空は静かに一日の終わりを告げていた。
「美津子さん、またピカチュウが出たよ。」 正雄さんが、スマートフォンを指さす。画面には愛らしいピカチュウの姿が映し出されている。 「あら、本当ね。じゃあ、私が捕まえるわ!」 美津子さんは、少しぎこちない手つきでモンスターボールをスワイプした。 「やったわ!捕まえられた!」 美津子さんの声が公園に響き、正雄さんは嬉しそうに微笑んだ。
二人がポケモンGOを始めたのは数ヶ月前のこと。きっかけは町内会での何気ない会話だった。
「最近ポケモンGOってゲームを始めてね、これが案外面白いんだよ。」 町内会の集まりで友人の良夫さんがそう言ったのをきっかけに、話は広がった。 「散歩が楽しくなるわよ。ポケモンを捕まえたり、ジムでバトルしたりできるの。」 良夫さんの奥さん、和子さんも楽しそうに付け加えた。
最初は「そんなの若い人向けだろう」と思った正雄さんだったが、スマホの使い方に慣れた美津子さんの後押しもあって、ポケモンGOをダウンロードしてみた。そして、気が付けば毎日の散歩が少しずつゲームと共に彩られていった。
「今日はどこまでポケストップを巡れるかしら。」 「いやいや、美津子さん、ジム戦で負けたから昨日のリベンジだよ。」
ポケモンGOが二人の日常にすっかり溶け込んでいく。散歩のついでに立ち寄るカフェでのひととき、ジム戦後の感想戦、子供の頃の思い出話に花を咲かせる時間。それらすべてが新しい輝きを持つようになった。
ある日、同じようにポケモンGOを楽しむ若い夫婦と出会った。 「こんにちは!いつも公園でお会いしますね。」 その笑顔に、美津子さんも自然と声を弾ませた。 「こちらこそ!ポケモンGOって本当に楽しいですよね。」
共通の趣味から始まった交流は、世代を超えた友情へとつながっていった。若い夫婦は、親しみを込めて「ポケじい」「ポケばあ」と呼び、互いのポケモンの進捗やジム戦のコツを語り合うようになった。
そして迎えたポケモンイベントの日。会場には老若男女が集い、それぞれのスタイルで楽しんでいた。正雄さんと美津子さんも友人たちと共にポケモンを捕まえたり交換したりしながら、笑顔が絶えなかった。
イベントが終わり、近くのカフェでほっと一息つきながら、美津子さんがふとつぶやいた。 「正雄さん、こんな楽しい毎日があるなんて、ちょっと想像もしてなかったわ。」 正雄さんはその手を優しく握り返し、言った。 「ああ、ポケモンGOのおかげで、いい仲間と素晴らしい時間に巡り合えたよ。」
夕焼け空の下、二人は手を取り合い、またいつもの公園を歩き出した。スマートフォンの画面には、まるで彼らを応援するようにカラフルなポケモンたちが踊っている。
老夫婦の新たな冒険はこれからも続いていく。その一歩一歩が友情に満ち、明日の喜びを連れてきてくれるからだ。
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