『AI将棋』は、セガサターン向けに発売された将棋シミュレーションゲームであり、思考エンジンには山下宏氏が開発した「YSS(Yamashita Shogi System)」が搭載されています。YSSは世界コンピュータ将棋選手権で複数回の優勝経験を持つ高性能エンジンであり、アマチュア五段相当の棋力を有すると日本将棋連盟から公認されています。セガサターン版では、反復深化探索とハッシュテーブルを活用した思考アルゴリズムが採用されており、当時の家庭用将棋ソフトとしては高速かつ高精度な対局が可能でした2。
ゲームモードは通常対局に加え、「目隠し将棋」や「迷人戦」などの特殊モードが収録されており、盤面編集や駒落ち設定などの自由度も高い構成となっています。特に目隠し将棋では、相手の駒が非表示となる状態で対局を進める必要があり、記憶力と推理力が求められる設計です。これらのモードは、将棋の基本的な対局に加えて、変則的な遊び方を提供することで、初心者から上級者まで幅広い層に対応しています。
操作性に関しては、セガサターンのコントローラーに最適化されたUIが採用されており、駒の選択や移動がスムーズに行えるよう設計されています。また、対局中の「待った」機能や盤面回転機能など、プレイヤーの利便性を高める補助機能も充実しています。これにより、将棋の学習用途としても有効な構成が実現されています。さらに、思考速度の速さも高く評価されており、テンポの良い対局が可能です。
グラフィックは2D表示を基本とし、駒や盤面の描画は視認性を重視した設計です。音響面では、打ち手に応じた効果音や環境音が導入されており、臨場感のある対局体験が可能です。全体として、セガサターン版『AI将棋』は、1995年当時の家庭用将棋ソフトとして高い完成度を誇る作品であり、YSSエンジンの性能を活かした本格的な対局が楽しめる構成となっています。
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