『天穂のサクナヒメ』は、2020年11月12日にマーベラスよりPlayStation 4およびNintendo Switch向けに発売された和風アクションRPGで、開発は同人サークル「えーでるわいす」が担当した。インディー作品ながら、稲作と戦闘を融合させた独自のゲーム性と高品質な演出により、国内外で大きな話題を呼んだタイトルである。
物語は、武神タケリビと豊穣神カムヒツキの娘であるサクナヒメが、都での怠惰な生活の末に神々の米を台無しにした罰として、鬼が支配する「ヒノエ島」へと追放され、そこで人間たちと共に生活しながら鬼退治と米作りに励むという構成である。サクナは、稲作を通じて神力を高め、島の浄化と成長を目指していく。
ゲームは、昼夜のサイクルに応じて「探索」と「稲作」が交互に展開される構成となっており、戦闘パートでは横スクロール型の爽快なアクションが展開される。サクナは農具を武器に、打撃・投げ・空中コンボ・羽衣アクションなどを駆使して戦い、羽衣を使った移動や敵の引き寄せなど、立体的な戦術が可能である。一方、稲作パートでは田起こし、田植え、除草、施肥、収穫、脱穀、籾摺りといった工程をすべて手作業で行う必要があり、天候や水温、肥料の配合などが収穫量と品質に直結するという、極めてリアルな農業シミュレーションが実装されている。
成長システムはレベル制ではなく、「収穫した米の品質」によってサクナのステータスが上昇する形式が採用されており、戦闘と稲作が密接に連動している点が最大の特徴である。また、拠点では人間たちとの交流や料理、装備の作成、素材の加工なども可能で、生活要素も充実している。
PS4版とNintendo Switch版は基本的なゲーム内容に差異はないが、PS4版は高解像度・高フレームレートに対応しており、トロフィー機能も実装されている。一方、Switch版は携帯モードでのプレイが可能で、手軽さと可搬性に優れる。いずれのプラットフォームでも、ロード時間や操作性は安定しており、快適なプレイが可能である。
演出面では、アニメ調の美麗なグラフィック、和楽器を基調としたBGM、豪華声優陣によるフルボイス演出などが高く評価されており、特に稲作パートの作業感と達成感は、他に類を見ない没入感を生み出している。主題歌「ヤナト田植唄」や、エンディングに至るまでの演出も含め、インディー作品とは思えぬ完成度を誇る。
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